ガヤガヤしてる校門で1人たたずむ…って、彼氏待ってるみたいじゃないか。
きっと、ツッコミする人でもいたら、今頃気づいたのかよ!!とでも言われそうなことに今気づいた。彼氏いないのに!そんな勘違いされたら辛い!しかも今から来るのが跡部さんとか…。恥ずかしい。いや、周りからすれば羨ましいんだし、胸張ってればいいのか?胸ないけど。
「苗字もういるじゃん」
ガヤガヤしてる中でもでかい声、しかも聞きなれた声がする。まさかと思えば案の定。跡部さんとちょっとバカな仲間たちじゃないですか、やだー。
「お前らも一緒なら帰ろうかな」
「お前失礼すぎるだろ!」
「私は素直なだけです」
キリッと効果音がつきそうな顔で言ってやる。多分これをメールとかで送ったら顔文字がつく。キリッていう。
跡部さんとちょっとバカな仲間たちのメンバーは今日は、跡部さん、忍足、向日らしい。まだ宍戸くんと芥川くんのが良かった。
「まあ、お前ら2人がいても、駄菓子屋は行きたいから行くけどさ」
「俺を抜くなんてやるねー」
「あ、お萩くんじゃん」
「久しぶり」
にゅっと背後から手が伸びてきて肩をつかまれる。お萩君じゃなかったら不審者になりうる行為だ!
「苗字さんって滝と知り合いなん?」
「1年生のとき1年間隣だったから」
「苗字さんと1年間隣になったら地味になるわ」
「今すぐに席交代するか?あ?」
「苗字って名前ちゃんのことだろうなと思ってついてきちゃった」
忍足と私の口喧嘩をものともせず話しかけてくるあたり相変わらず萩くんは萩くんのようだ。ちなみに萩くんというあだ名は私が萩くんの名前を萩滝之介と間違ったことから始まっているという裏話があったりなかったり。
「喋ってねーでさっさと行くぞ」
跡部さんを先頭にして歩き出す。何この珍集団。頭の色もおかしいし色々おかしいじゃねーか。と、列の1番後ろから眺めて思う。
家とは逆方向にずんずん進んでいく跡部さんとちょっとバカな仲間たちの背中についていくと、少し昔の家のような雰囲気の店が見える。
「あれが駄菓子屋だ」
ドヤ顔の跡部さん。そんなに嬉しいか、知識を披露できて。
「好きなだけ買ってこい」
「あざーす!」
「名前ちゃんと跡部が親子に見えるな」
「どこが」
私と跡部さんが親子なんてあまりに違いすぎて爆笑レベルだ。
走って店内に入る向日、後を追う忍足の後に続いて店内に入った。
中は思ったよりお菓子の山で。
「苗字さんどうしたん?跡部の眼力みたいなポーズして」
「お菓子の玉手箱や…」
「もうちょっと面白いこと考えてから言おうなー」
私はこう見えて甘党なのである!どう見えて?とかいうことは受け付けていない。柄にもなくテンションが上がりきったままチョコの山へと向かった。
「そろそろ決まったか?」
店内に入ってから15分後。跡部さんが皆に聞く。何でも全員分奢るらしい。太っ腹。だけど、
「ちょっと待って!!」
「アーン?さっさと決めろよ」
「だって向日が私が取ろうとした最後の一個のチョコを離さないんだもん」
「それはこっちのセリフだ!俺のが先に取った!!」
「誰がそんなこと決めたんだよ!このチョコは私のだ」
「誰がどう見ても俺の方が先だっただろ!?」
「10人中10人がそう言うわけじゃないんだから決めつけないでよ…そして離せ。チョコは私の恋人なんだ」
「そんなもん、知るかっ」
「2人とも落ち着きなよ」
「せやて。ジャンケンでもすればええやん」
「ジャンケンでこのチョコが向日に渡ったらかわいそうでしょ!」
「ただのチョコにどんだけこだわってるんだ、さっさと決めろ」
「じゃあジャンケンだからな、一回勝負だからな!!」
「わかったから一回手離してよ」
「お前も離すなら離す」
「せーので離してよ?」
「おう」
「せーの!」
お互いの手からチョコが離れて、1度元の場所に戻る。そして、そのチョコをかけて私も向日もジャンケンの態勢になる。この前のグリコの件でどっちとも互角なことは確認済みだからな…。負ける確率も高い。ならば!
「跡部景吾を召喚!!自分の代わりにジャンケンをしてもらう!」
「あ、ずりーぞ!!じゃあ、滝萩之介を召喚!」
「え、勝てないよ?」
「ちょお、岳人、俺は?」
「侑士負けそうだからやだ」
私は跡部さん、向日は萩くんを召喚してジャンケンをする。平等ではないが、いざ、尋常に勝負!!
「グーとチョキで…?」
「勝ったああああ!!!跡部さんありがとう!」
「跡部召喚するとかずりーだろ…」
「お前が萩くんを召喚した時点でその言い逃れはできないんだよ!残念だったな」
そのまま私はチョコをさっと取り上げ、レジへ。完全なる勝利である!!
私が勝って手に入れたチョコは1番始めに食べてやった。勝負の後のチョコはうまい。
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