女子の憧れだという壁ドンとはそこまでいいものじゃないと今現在ひしひしと感じている。
「俺の教科書に落書きするとはいい度胸してるじゃねーか」
「落書きしたつもりじゃないんだって。ちょっとうとうとしてたらボールペンがついちゃっただけだって」
跡部さんに壁ドンをされた状態で、最後の言い逃れをする。言い逃れでもなんでもない事実だけど、書いてしまったのも事実。だから一応反省している。
いきなり現れた跡部さんにびっくりして逃走したのも反省している。けど、それは跡部さんが悪い。すぐに追いつかれるのもわかってたけど。
「そもそも授業中に寝るな」
「寝てない。うとうとしてた」
「授業をちゃんと聞いてりゃ眠くなんてなるはずねぇだろ」
「授業をちゃんと聞いてるからこそ眠くなるんだよ」
貴方にはわからないだろうけど。心の中で悪態をついたって今の状況は変わりはしない。お願いだ神様、この状況をどうか打破する術をください。
「落書きをしたにも関わらず、謝罪もしずに樺地に返させるのも気にいらねぇ」
「忘れてた」
「忘れてたですむと思ってんのか、アーン?」
「思ってないけど許してくれたっていいじゃん」
「いくら俺の心が広くても無理だ」
「無理じゃない」
「無理だ」
「無理じゃないって」
「無理だって言ってるだろーが」
「じゃあ、どうすればいいの」
「そうだな…」
口に手を当てて跡部さんが考え始める。なんとか壁ドンは脱出した。
それにしても、跡部さんが考えつく条件とかなんだろう。跡部さんに限ってお金関係はないと思うけどな。
「地味になる方法を教えろ」
「生まれつき」
「他にも何かあるだろ」
「ないわ!」
「これで許してやるって言ってるんだから安いもんだろ」
「何も安くない。私のハートが大損害だよ」
いくら跡部さんでもそれは許しません。そう伝わるように睨むと、跡部さんがふっと笑った。
「何笑ってるの」
「やはりお前は面白いと思ってな」
私的には跡部さんの方が面白いと思うけど。あまりに2次元的すぎて、初めて見たときに爆笑したことを思い出す。金持ち、金髪、顔良し、頭良し、運動良し。面白要素いっぱいだと思う。
「俺様がそんなことで怒るわけねーだろ」
「怒りそうだと思う」
「お前の中で俺はどんなイメージなんだよ」
「ご想像にお任せします」
「まあ、いい。元々俺が地味になれないことはわかってるからな。何か庶民ぽいものを奢れ」
「怒ってないんじゃなかったの?」
「怒ってねーが聞いてもらえるなら聞いてもらった方がいいだろ?」
氷帝の王様は何とわがままなことで。
その後ゴリゴリくんを奢ってあげたらご満悦気味だったから、やっぱり跡部さんと私の価値観は全く違うんだと思う。
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