「いよいよ、体育祭です。少し早めの体育祭ですが、今日は晴れて、最高の体育祭日和となりました。今日の……」

私のそんな言葉の後にピストルがなって、体育祭が始まった。
最初からやっぱり騒がしくて、四天宝寺らしいなぁなんて思う。今年の体育祭の目玉はやっぱり午後にある借り人競争だ。女子のときは男子、男子のときは女子。箱の中の紙に書いてあるのと同じ特徴を持つ人をつれていく競技だ。


「会長、次出るんじゃないんですか?」
「え、あ、うん。」

後輩にそう言われ、私も自分のクラスの競技に参加する。正直、生徒会と競技の行ったり来たりは結構辛いけど、皆が楽しそうにしてくれていると今まで頑張って計画してきた甲斐がある。

「次は、えー、部活対抗リレーです!」

そのアナウンスに、私の体が固まる。あのときのことを思い出してしまうから。自分の汚いところを目の前につき出されているような、あの感覚が嫌で、見たくなくて、

「ごめん、ちょっと休んでくる」

そう告げて逃げだした。


「っ、」

走って逃げだしたら、ぼろぼろ涙が溢れてきた。
今ごろ皆リレーだろうか、渡辺ちゃんは応援してるのか、はたまた参加しているのか、なんで私は泣いているのか、全部わからなくて、とにかく泣きじゃくった。

「?名前はん、どないしたんや」
「え?」

俯いて泣いていたせいか人がいることに気づけていかったみたいで、顔を上げたそこには銀さんがいた。

「ぶか、つ、リレーは?」
「あぁ、あれは選抜メンバーだけで走ることになってなぁ、遠慮させてもらったんや。」
「……そっか」
「で、名前はんはなんかあったんか?」
「……、」

なにかあったのか、そう聞かれて胸に浮かんだ何かがとても形にはできなくて、ただ首を振るだけになってしまった。

「名前はんは頑張り屋やから、沢山溜め込んでるんやろなぁ」
「そんなこと、ない」
「いや、わしは名前はんが頑張ってるの見てるで?きっと、見てる人はちゃんと名前はんの頑張りをみてる」

頭をぽんぽんしながら銀さんが、ゆったり、慰めてくれるから、余計に私の涙腺は緩んでしまって涙が次から次へと溢れていく。

そんな私になんにも言わずにただ、背中をさすってくれる銀さんが、泣いてもええで、なんて言ってくれている気がして、私は今までの気持ちを洗い流すかのように泣いた。


「ごめん、銀さん。ありがとう。」
「いや、礼を言われることはしとらん」
「とにかく、少し楽になった。本当にありがとう」
「それならよかった。無理はあんまりせんようにするんやで」
「うん」

散々泣いたせいで、真っ赤に充血した目を冷やしながら、とっくに対抗リレーは終わっているであろう会場にもどった。





「休憩ながすぎや!!って、どうしたん?」
「副会長ちゃんは厳しすぎだよ、私の競技なかったでしょ?」
「ないにしても休憩しすぎ」
「すみません」
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