「名前食べるのはやいな」
「え?」

謙也のそんな言葉に皆がほんまやんとか、どうしたん?なんて聞いてくる。
でも、ここに居づらいから早く食べて出ていこうとしてるなんて言えるわけもない。

「先輩っていつも食べるのはやい方なんすか?」
「普通だよ」
「嘘や!めっちゃ遅いやんけ」
「なんで今日ははやいんです?」

そんな言葉に、返事は返せなかった。

「あ、えっと、先教室もどる!用事あったから早く食べてたんだよね」

そういって、なかば強引にそこから立ち去った。
階段をかけ降りていくときに思い浮かんだのは、渡辺ちゃんの顔だった。財前くんが私に話しかけてきたとき、渡辺ちゃんの顔が完全に嫉妬してる女の子の顔で、そこで、今日の渡辺ちゃんの行動全ては嫉妬からきていることに気付いたのだ。

「私が悪かったんやなぁ」

ぽつりとそう溢してしまう。思い出せば思い出すほど自分に非があって、渡辺ちゃんに嫌な思いをさせてしまったことに大分後悔する。

「おい苗字」
「なに」

後悔のどん底に居た私に後ろから話しかけてきたのは一氏だった。珍しく単体。

「なに見え見えの嘘吐いとんねん」
「何が」
「お前出ていった理由あいつやろ。渡辺。」
「……よう見とるねほんと」
「渡辺は完全にお前に嫉妬しとったからな」

もっと早くその事に気付いてれば嫉妬させないように動けたのに。あの時自分の感情しか考えれなかったことにも後悔。

「嫉妬とはいえ渡辺もなかなか汚い手つこうたな」
「まぁ私に非があるし」
「まぁ私に非があるし、ちゃうわ。そんないい子ぶりっこしとるから辛いんやろが」

一氏が声真似つきでそう言う。こんなかっぱに言われても響かないけど、確かに正論だ。自分に非がある。そう言えば済むと思ってるところもあって、正直女の子の嫉妬とはいえ、傷ついたは傷ついたし。

「一氏の言う通りだね、正直ちょっとはイラッとしちゃったし」
「ま、お前は渡辺にそのイライラぶつけんかった訳やしまだましなんとちゃうか」
「…ありがと」

そんな一氏の言葉のお陰でなんだかさっきまでのもやもやは少し、すっきりした。全て私に非があるし、じゃなくて、ちゃんと自分の気持ちも、渡辺ちゃんの気持ちも受け止めてあげないとな。そう思えたから、次あったときは、ちゃんといつも通り接することができそうだ。





「一氏がフォローなんて珍しいね」
「俺もあいつにはむかついとんねん」
「え、なんで」
「あいつはじめて会ったときから小春にべたべたべたべたしよんねん!!!!!あいつが居ると小春構ってくれへんし!!!!!あいつはほんまに許さん!!!」
「結局それか」
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