一方、ヴァリアーが動くとなると、当然本部も動いているわけで。




こちらへも大して待つ事無くすぐに本部から連絡が入った。

その内容は主に3つ。魔女を狙うファミリーは概ね2種類に分かれている事、此方も同盟ファミリーへの協力を要請する事、ファミリーによって説得と武力行使を使い分ける事。


現在分かっている事ではアナスタシアを利用しようと考えるファミリーと、魔女という存在を危険視し排除しようとするファミリーの2つが存在する。
が、前者の殆どが過激派である事から説得は難しい。
後者ではアナスタシアをリスキーな存在とした根源を突き止め説得を試みて、正式文書にて不可侵の旨を主張すれば抑えられる可能性はあるとの事だ。




「穏健派については餓鬼共と本部のぬるま湯共で如何にかするらしい。こっちの仕事は過激派の排除だぁ。標的の詳細は資料に全部乗ってるから後で見とけぇ」



スクアーロの簡単な説明でも一を聞いて十を知る事が出来るのは、今までの経験の賜物だろう。幹部メンバーの会議は驚く程あっさり終了した。
解散が告げられて各々席を立つ中、資料に目を通していたベルが口を開く。



「これ上から順番?」



「違ぇ、組織のデカさ順だぁ。でけぇ組織が潰れれば弱小は恐れを成して逃げ出す。つーかそのくらい考えて動けぺーぺーがぁ!!」



「ししっ、珍しく戦略的じゃん、先輩」


「何言ってやがる!今回は規模がでけぇ、弱い雑魚共だからって見縊ってないでテメーも真面目にやれぇ!!」


「こんな奴ら王子の手に掛かれば一瞬で終わりだけどな。まぁお前がなーんか知らねーけどアナスタシアの為に頑張ってんのは一目瞭然だから王子も偶には協力してやるよ、ししし」



「なっ…!う"お"ぉい!!そんなんじゃねぇぞぉクソ餓鬼!!…ぐッ!!!?」

「うるせぇカス」



今し方扉が開いて美味しそうな匂いが部屋を満たす。
ベルと入れ違いで運ばれてきたステーキの横にあったグラスは、ザンザスによってベルの挑発に乗ったスクアーロの後頭部にヒットした。



「さっさと出てけ」



「…チッ!」





扉を乱暴に開け放ち、廊下で早足になりながら考える。
スクアーロはベルに言われた事が理解出来なかった。

剣一筋で今までやってきたという中、自分がザンザス以外の者、否。それ以上に女性関係で何かが起きるなど考えた事すら無かったのだ。性欲処理は一月に一度程度の、それも機械的な作業のように娼婦を利用しているだけであるし、恋愛感情や愛情というものを感じる事も今まで無かった。それではアナスタシアに抱くこの感情は何か?尊敬でも無い、憧れでも無い。何故自分はこんなにも必死に彼女を守ろうとしているのか。



「(…いや。恐らく彼奴がヴァリアーにとって必要な奴だからだぁ)」


“ザンザスの部下として他にくれてやるのも封印や熄滅も惜しい奴”“女である事も、魔女である事も関係ない”。結局そう結論付けてシャワールームにて、頭に残るガラスの破片と流れる血を、情などという邪な思考と共に冷たい水で洗い流した。






ー後、もう少しー




気付かない内に、拡大していく。




2015.09.26 Yuz

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