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Je pence a toi


トワイライト

(現パロ・ちょっと艶)


 片腕をついて上体を起こすと、身体の下から微かに軋む音が響く。くしゃくしゃによれたシーツはしっとりと冷たい。肩からずれ落ちた布も同じように湿っていて、しかし体温を吸って、温い。
素肌の上をするりと滑って、腰の辺りに蟠る布。薄明かりの照らす白い皮膚は、作り物めいた白々しさを纏って浮かび上がる。所々の鬱血痕さえ無機質に映る。

 半分、夢の際を漂いながら、ゆっくりと振り返った。下半身にいまだ纏わり付く布は複雑で緩やかな皺を描き、自分とは別の人間の身体も覆っていた。露出した胸板が規則的に上下する。整った顔立ち。無機質だ。わたしと、おなじ。

 声は出ない。目覚めたばかりだから、乾いているのだろうか。吐息が停滞する空気に溶ける。今が昼なのか夜なのか分からない。何処からか来る薄明かりだけは、変わらずに曖昧に"今"を照らし続ける。
 倦怠感が支配する身体を難儀しながら引き摺って、眠る彼の方へ近付いた。裸の胸に、自分の手を乗せると、暖かさが伝わってくる。肌は、さらっとしていて――少し前の、私と、彼の、汗とか色々なものでべたついていた感触がうっすらと過ぎる。うっすらと、でも、生々しく。
 それは酷い有様で。もう二人して、むちゃくちゃになって、熱くてべたべたで、大変だった。呼び合う声も掠れ。相手と自分と、それ以外は何も無い。

 ………そう、何も無い。
寝起きの所為か、なんなのか、空ろな目で私は、彼の綺麗な顔を見詰める。彼は私の所有物で、私もまた彼のそれなのだ。
 うっとりと重ねた唇はぬるい。うつくしい、紫いろの瞳は閉じたままだ。開けばきっと始まる。繰り返し、繰り返し、私と彼の時間が。
 狂気のようなじかんと、今の静謐、停滞のじかん。世界は私たちを置いて何処かへ行ってしまい、私たちは残される。
 あぁ、幸せだ、と思う私は、いけないのだろうか。

 此処にいては分からない。永遠に。









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