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二【私と死神】
この世には二種類の“魂魄”がある。
一つは、「整」と呼ばれる通常の霊。カンナや一護など霊感がある人間が目にしているのがこれ。
そしてもう一つは、「虚」と呼ばれる…さっきも襲ってきた白い仮面をつけた化け物。虚は生者、死者の別無く襲って魂を喰らう――所謂“悪霊”らしい。
――えっと…なんだろう。
死神について一護とルキアに説明を求めたら……意気揚々としてルキアが説明してくれてるのはいいんだけど…。
説明する為に彼女が用意した紙芝居もどきの絵にどうリアクションしていいのか判らない。チラっと一護を見ると視線があったが、一護は顔を左右に振って何か悟りをひらいていた。
『(君も、この説明を受けたのね)』
「ここまでは、お判りになられましたか?姉様!」
『んあ?あー…ああ』
未だに姉様と言うのかとか訂正する間もなく…カンナはルキアがまた取り出した紙芝居もどきのスケッチブックを見た。――彼女は壊滅的に絵が…下手なのね。
説明内容はとても分かりやすいのに、描いてあるイラストは内容に合っていないファンシーな絵で……それが衝撃的で内容が頭に入って来ない。ある意味、丁寧な説明が壊滅的なイラストに負けていた。
まだ、ルキアの説明は続く。何故か彼女はイキイキしていた。
――死神――…。死神のシゴトは二つ。
一つは「整」を「魂葬」で尺魂界へと導くこと。二つ目は「虚」を昇華、滅却すること。
「お判りになられました?」
『…尺魂界ってなんなの?地獄みたいなところ?』
「いえ、地獄ではありません。死んだ者が行く場所でありまして、地獄よりもいいところであります」
なるほど。カンナは深く頷いた。
だから、ルキアは一護を助けてやむを得ず死神の力を譲渡して彼の家族を助けた、と。その事で、ルキアは死神の力を失ってしまったので、力が戻るまでは一護が彼女のシゴトを手伝うことになった、と。
段々この状況が判ってきた。
――ん?
『地獄よりもいいところって…ってことは地獄って存在するのかい?』
ポツりと疑問に思った事を口にする。
一護も気になったみたいで、そう言えばーと答えを持っているルキアを見た。
「え、ええまぁ…」
答えたくないのか――ルキアは曖昧な表情で頷く。
あんまり訊いてほしくないような雰囲気で…カンナと一護は顔を見合わせ頭の中を疑問でいっぱいにした。が、二人ともまあいいかと疑問を受け流す。
『とりあえず…学校行こうよ』
「……そう言えば、お前何でこんな時間に登校してんだ」
『ん?さっきの虚に追われてたからだよ。で、なんか…変な帽子を被ったストーカーなオッサンに会ってかなりの時間を取られたわけさ』
「はあ?ストーカーって、お前大丈夫なのかよ」
『う〜ん…なんかあたしのこと知ってたんだよね、それだけ』
「それだけって」
「姉様っ!そいつは下駄を穿いた怪しげなやつでしたか!?」
一護と会話しながら、ルキアの三人で公園を後にする。
襲われていた男の子の幽霊は、さっき一護が持っていた刀の柄で尺魂界とやらに魂葬していたので、一安心だ。
思えば…もうお昼が近い時間になっている。あの虚に襲われなければ、こんなに遅刻する事もなかったというのにッ!後、ストーカーなオッサンも。
ルキアがその男の特徴を口にしてきたのにびっくりする。
『え、そーだけど。え。何、朽木の知り合い?』
「あ、はい」
『喜助とか言ってたけど…朽木の知り合いなら安心だね。見た目程変なヤツじゃないんでしょ?あ、姉様って呼ぶのやめてよ、カンナでいいから』
そう言ってあたしは困った風に笑いかけた。
いくら彼女の姉に似ていようが、あたしはルキアの姉にはなってやれない。
「では、カンナ様で」
『様はいらないよ』
“様”付けって……どんだけ偉そうなんだ、あたし。
「…カンナさん!」
『まあ、いいか』
「カンナさん!では私のこともルキアと呼んでください!」
『ん?ん、判った』
「お〜い早くしろよー!俺の体が気になる」
『今頃、救急車で運ばれてたりして、ね!』
「シャレになんねーからッ!」
いつの間にか早く歩いていた一護に軽口を叩きながら――三人で笑い合った。
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