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一日入院する事となった。最悪です。

彷徨える霊がうじゃうじゃいます。最悪です。

昨夜は寝れませんでした。最悪です。

――まぁ、今日で検査が終わったので、帰りますが。



『はぁ〜』


――コンコン


『ん?』


ノックする音がしそちらを見ると昨日の男の人が立っていた。昨日と同じく全身を黒で統一している。


『…』

「…」

『どうも、昨日は私の知り合いがすみませんでした』


彼が一向に喋らないので、私から口を開く。若干気まずい空気が流れていたので、それを払拭させたかった。

麻衣が迷惑をかけたのも事実で。たぶんカメラか何かを壊していたはず。詳しく確認していなかったから分からないけど。


『あ、私…葉山瑞希と言います』


名乗っていなかった事を思い出し自ら名乗る。


「私は林 興徐と申します。昨日は助けていただきありがとうございました」

『…いえ、あぁありがとうございます』


彼にも自己紹介してもらい、リンさんは私にお見舞いの品らしき物をくれた。

――紅茶らしきもの…。


『…中国の方なんですね』


そう私が口にした途端リンさんの周りの空気が冷たくなった。


「私は日本人が嫌いです」


いきなりなんですか?なんの告白ですか?


『はぁ』

「…それだけですか?なんとも思わないんですか?」


リンさんが、私の気のない返事に目を鋭くさせる。


『それは個人的な出来事で?それとも歴史的な事柄で?』

「歴史的事柄からです」

『そうですか。確かに歴史を紐解けば…日本は中国に酷い事をしたのは事実ですね。でもそれは日本だけじゃない』

「だからと言ってっ!」

『えぇ分かっています、でもそれはお互いに過去を勉強し…そして、そこから憎しみを生むのではなく、これから先もこのような事が起こらないようにする方が大事な事なんじゃないですか?』

「……」

『あなたのように過去ばかりに目を向けるのでは先に進みません、お互いいがみ合って同じことを繰り返す方が愚かだと思いませんか?』

「……」

『許せない事は許せないままそう思ったままでいいとは思いますよ。 ただ…それを個人の関係まで持ち込むのは頂けませんが……じゃないとあなたが日本で暮らす上でストレスが溜まりますよ?』

「そう、ですね」


そこまで会話するとリンさんは表情を緩めた。


『ところで…あなた方は旧校舎の依頼で?』

「えぇそうです、どうしてそれを?」

『私こう見えても生徒会長なんです、校長から伺っていましたし…』


そこまで言ってリンさんの後ろ―…式をチラりと見る。

それに“山田家”へも校長から依頼があったので粗方知っていた。





――山田一族…。

その道では有名な結界術を使う化け物退治専門の一族。

私の実の父親の一族だ。父はその一族の当主だった。

山田一族の人達は、悪霊化した霊や、妖怪などを滅する力を持っている。

だけど、その一族は謎に包まれており、実際に目にしいた人は少ない。


そりゃーそうだろう。私が小さいころに父は亡くなり一族は私を残して途絶えてしまったのだから………。



「あなたは…」

『あ、私今から帰れるんです、あなたも一緒に出ますか?』

「え、えぇ」


幽霊などの類が見えるなど…好き好んで口にしたくはない、例えこの人が霊能者でも――…。

目の前で目線を動かしてしまったのは迂闊だった。無理やり話題を逸らして外へと促す。







『そう言えば…あなたは日本人が嫌いと言いましたが……』

「はい」


歩きながら学校の方角へ向かう。

彼と私の間にひゅるりと風が通る。この距離は今の彼と私の心の距離をあらわしている様―――……。





『私は中国人も、日本人も嫌いです――…人間そのものが嫌いです』


とびっきりの笑顔でそう告げた。







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