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※本編が終わった頃を想定した番外編な為、若干ネタバレ。
※夢主→大学生。麻衣→高校二年生
※夢主とリンさん恋人同士で、周りもそれを知っている。
※意味不明なとても内容が薄いです。
以上が許せない方は回れ右でお願い致します。
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世間では休日の今日、私こと葉山瑞希にとって、アルバイトを入れていなく一族関係の仕事もなかった為、課題に追われている他は至って自由な日だった。
在学している大学のレポートの期限が迫っているわけでもない、修行をするわけでもない、一日予定がない日はとても久しぶりで。
日々忙しく過ごしていた弊害がここで出てしまった。休日の有意義な過ごし方がわからない――…まるでストレス社会で働くサラリーマンのような思考回路。
「あれ?先輩?」
特に理由はない。
暇で仕方なかったから来てしまった、それに尽きる。
「え、瑞希先輩今日お休みの日…じゃなかったでしたっけ?」
通い慣れた道のりを経て辿り着いた場所にて、可愛がっている同じ高校にいた谷山麻衣と視線がばちりと合った。
『あー…うん。暇だったから遊びに来ちゃった』
私のバイト先――渋谷サイキックリサーチの所長は、事務所をカフェ代わりに使用するのを毛嫌いしている。
重々承知しているのに来たのは、ホント何をすればいいのか分からなかったのだ。他に理由を挙げるとすれば……恥ずかしながら、恋人もまたここで働いているからである。乙女かッ!
言い訳させてもらえるなら、本来ならではの私であれば今頃朝から修行をしていると思う。修行を怠って術の成功率と威力を下げたくないから努力を惜しまないのだけれど。
昼食を忘れ、時に夕食まで忘れ夜通し集中して、外で一夜を開けることもあり、それを知った恋人――林興除に叱責されて。
ジーンに修行バカだと言われるほどの私は、リンさんに一に適度な休憩を挟む事、二に一日何もしない日を極力入れる事と口を酸っぱく言われている。
心配してくれているのは素直に嬉しい、だが一言物申したい。
――働きすぎなリンさんに言われたくないわ。
本人に言えば、返ってくるのは決まって上司が人遣いが荒いので。だ。納得、文句も言えまい。リンさんと私の上司は同一人物だ。唯我独尊を地で行く冷徹な男の下で働く苦労は身に染みているもの。ぐうの音も出ない。
『差し入れも持ってきた』
休日にわざわざ仕事先へと現れる暇な人間だと思われたくない……実際暇な人間なのだが。手ぶらでは憚れた為、来る途中で購入したドーナツが入った箱を揺らして見せた。
麻衣の周りには、本来いるのは不自然な面々――麻衣命名、愉快な仲間たちが寛いでいる。
いつもと同じ光景に見えて、少し感じた違和感は、麻衣にドーナツを渡して気付く。女同士で密集して座り、男メンバーは肩身が狭そうに隅に座っていた。苦笑するぼーさん珍しい。
「わぁ!ありがとうございます〜」
お茶を淹れてくれる麻衣に私も客でもないから手伝うからと、後遊びに来たとナルとリンさんに一言告げるつもりだったのだけれど。
なぜか、ぼーさんがドーナツの箱を麻衣から受け取り、ジョンと共に給湯室へとそそくさと逃げ込んだではないか。変なぼーさん。いつにも増して変だ。そう言えば、ぎこちなくぼーさんに付き添って姿を消したジョンもまた様子がおかしかった。
まあ訝しむ前に、理由は彼女達にあるのは明白だと顔をそちらに向ければ、綾子さんが肩を竦めて色気たっぷりに微笑んだ。弧を描く真っ赤なルージュがなんとも言えない妖しさを生んでいる。
ああ、やっぱり彼等の挙動不審な原因は彼女達にあるらしい。なにを企んでいるのやら。
『…綾子さん』
「いやぁね〜あたし達は何もしてないわよ、ねぇ?」
「えぇ。あたくし達はただお話をしていただけですわ、さっ瑞希もお座りになって」
にっこりと笑う真砂子と、先輩先輩と腕を掴む麻衣に促され腰を下ろした。異様な空気に思わず身構える。
私が来ていると騒がしさで知ってしまっただろうナル達が姿を見せないのは、綾子さん達を警戒してなのかもしれない。
なにかと衝突し合う真砂子と綾子さんがタッグを組んでいるなんて、かなり怪しい。怪訝な表情になっているだろう私に、麻衣までにんまりと笑って口を開いて――…
「あたし達これを見てたんですッ!」
詳細を教えてくれた。バーンと得意気に開いて見せてくれた雑誌の特集に目が止まる。
『えぇ〜…デート特集?』
――え。デート特集?
どんな無理難題を吹っ掛けられるのかと失礼なことを考えていたのに。拍子抜け。そっと小さく息を零し、あらぬ疑いをかけてしまって申し訳なく思った。ゴメンね。
「ね、ねねねね!先輩っ」
『な、なにかな?』
女性向けのファッション雑誌のデート特集の一覧には、デートするにはどこがいいかなどの定番な質問とそれに応えた女の子達の回答が記載されていて。
他に、マイナーなデート場所と失敗談、どれくらいの付き合いでキスまで進んだか、それ以上はどれくらいの時間を要したかなど大声では話せない内容が赤裸々に綴られている。
高校生の時…といっても一年ほど前でそんなに昔じゃない、クラスメイト達が似たような雑誌を用いて盛り上がっていたっけ。
騒ぐ彼女達の近くの席の住人は、いつも居心地悪そうにしていた――…さっきのぼーさんやジョンみたいに。なるほど、それであんな態度だったのね。
「先輩だったらどこへ行きますっ?やっぱり夜の水族館なんて憧れますよねっ!?」
『えっ』
「バカね。水族館なんてお子様の行く場所じゃない。ここはドライブがてら夜景を見に行く、これの方がムードも作りやすいってもんよ!そうでしょ?」
『えっ』
「水族館も夜景もあり得ませんわ。ね、瑞希…二人ともこう仰るのよ、信じられます?」
――こりゃナルも出てこれないわ。
目をキラキラさせている麻衣、綾子さんの余裕のある勝ち誇った笑み、真砂子の冷めた眼差し。三者三様である…興味なさそうな真砂子が口にした意味も判るが、真砂子も呆れながらも内容には興味があるみたい。
真砂子も年頃の女の子なのよね〜…と、自分を棚に上げて感慨深く一人ごちた。
「いーじゃん、夜ってムードたっぷりじゃない」
「朝や昼よりも夕方以降の方が開放的になるっていうものね、付き合ってなくても付き合っていてもデートなら夕方以降がおススメよ!」
麻衣や真砂子よりも経験が豊富な綾子の力説は暫しの沈黙を作った。
「じゃあ!真砂子はどんな場所がいいのー?」
「そうよそんなコト言うならさぞかし素敵なデートプランなんでしょうね?!」
「あたくしでしたら、美術館や博物館、映画を観に行きますわ。松崎さんの御薦めの時間帯なら、ディナーなんかもいいですわね」
芸術にとんと縁がない麻衣と綾子が揃って顔を顰めている。
興味がなくても行ってみれば、新しい発見なんかして楽しいのに。勿体ない。私も美術館や映画館はよく行く。会話がなくても時間を共有できるから、楽でもあるのよね〜。
「瑞希はどうですの?」
『私は…』
彼女の恋人を思い出して麻衣と綾子がはっと顔色を変えた。
瑞希とリンがどんなデートをしているのか二人は好奇心で知りたくなったのである。
デートプランについて口論していたのは二の次。だってあのリンだ、長い付き合いの自分たちにすら本音を見せないあの朴念仁のリンが!果たしてどんなデートをしているのか!好奇心が頭をもたげるのは自然な流れでしょう!
『ごめんなさい、二人を否定するわけじゃないんだけど……夜に水族館や夜景とか…イルミネーションを観に行くのは、ちょっとね』
後輩には甘い瑞希が否定するとは思ってなくて、麻衣が絶句した。なんでー!
真砂子がしたり顔で頷いているのが見たくもないのに視界に映り、ぎりぎり歯軋り。そんな麻衣に苦笑した綾子が代弁してくれた。
「なんでよー!あっ、じゃあドライブとか海とか」
『夜にですかっ?』
「えっ逆に聞くけどどうしてそんなに夜がイヤなのよ!人混みが嫌いなら、夜の方が……」
『あー…それは…』
真砂子と顔を見合わせて、苦笑し合う。
「出ますでしょ」と真砂子が言ってくれて、私も『特に海とか夜景を観に行くのは……呼ばれますからね』と詳しく添えた。
助けを求める霊は、そこかしこにいて。夕方から逢魔が時まで助けてくれる人間を探している上に、性質の悪い者は、あの世に連れて行こうとしている。そんな異様な場所でデートとかしたくない。そっちが気になって仕方なくなるもの。
そう説明を更に詳しく添えれば、麻衣と綾子さんの面差しが引き攣っていく。
視える人は苦労しているのね…と二人は感想を零して、視えなくてよかったと二人の心情が一致したとは、私も真砂子も察してあげれなかった。
――クリスマスとかのイベントにイルミネーションを観に行くのって憧れるんだけど…ね。
仕事以外でいそうな場所に行くのは勇気がいる。彼等が寄って来ないように式神を連れて行く手もあるけど、デートにそれはないわ。
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