麻衣の疑念[其の一] [1/4]
あたしが働いているここ、渋谷サイキックリサーチで助手を務めているリンさんを見て思う。
リンさんって、みずき先輩の事…その…好きなんじゃ〜…。
最近疑念がぷくぷく浮かび上がっています。
ここで働く様になってそんなに経ってないけど、リンさんはあたしが淹れた紅茶を飲んでくれない。 まぁ…それどころかあの人はあたしと会話すらしてくれないけど…。
――って、そうじゃなくってっ!
みずき先輩が淹れた紅茶には口にしてるんだっ、リンさんはっ!
それに、現に今だって……。
「それは何ですか?」
『え、これですか…? これはどら焼きですよ。ここに来る途中で買ってきたんです。――リンさんも食べますか?』
「いいんですか?」
ほら、リンさん少し顔を綻ばせている。
『はい、ただ…これ紅茶じゃなくて緑茶じゃないと合わないですよ、和菓子なので』
「大丈夫です」
『なら、淹れてきますね。麻衣も食べるよね?』
ソファーから立ち上がった先輩は準備する為にこの場を去った。
去った途端訪れる沈黙。この場にはリンさんとあたしの二人。
――何か話してくれたっていいじゃないっ!
みずき先輩とあたしの態度の違いにちょっと凹む。
普段ならリンさんは資料室に籠っている癖に、今日は珍しくみずきせんぱいとあたしの三人で仲良くソファーに座って仲良く緑茶をすすった。
そんな事ばかり考えていたせいか……、
その時かち合ったリンさんの眼は…「お前は邪魔だ」と言ってるように見えた。
その眼差しは何処までも冷たい。
ひゅるりと隙間風が吹いたような気がした。
――怖っ!
でも、めげないよっ!
あたしだって…みずき先輩とお茶したいいんだーぁー!
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