____一方その頃、血明城では
「サクラ様〜、サクラ様?入りますよ?――失礼します」
サクラの護衛であるオリーヴが、主の部屋を訪れていた。
「サクラ様…?」
いつも座って本など読んだりしているソファーには、サクラはおらず、オリーヴは室内を見渡す。だが…姿はもちろんのこと、気配すら感じなくて、オリーヴは眉を顰めた。
――まさか…。
ある可能性に行き当たったオリーヴは、急いで寝室を覗き、主がいない事を確認し、眉の皺を増やした。
「ちゃんと警備してたのに…一体どこから…」
不意に、顔を上げたら視界に揺れるカーテンが映って、悟る。――ここから、逃亡したのかッ!
「――ん…?」
ふわふわ揺れるカーテンとソファーの間に、落ちていた一枚の紙を拾う。何かメモみたいな…文字が見えた。
読み進めると――みるみるオリーヴの顔が、般若の様になっていく。そして震える手で、扉に手をかけ部屋を出た。
目指すはそう、
「フォンヴォルテール卿ッ!」
眉間の皺がチャームポイントなフォンヴォルテール卿グウェンダルの執務室。
オリーヴは部屋の前で一歩も止まらず、しかもノックもせずに室内に乱入した。
「フォンヴォルテール卿ッ! 一人、諜報部員…いえグリエを貸してちょうだい」
「……なんだと?」
「いいから、今すぐにッ、彼がいなければ…諜報に長けているヤツならば、この際誰でもいいわ」
いきなり入って来たオリーヴに、邪険な顔をしていたグウェンダルだったが……切羽詰まったオリーヴの様子に、何があったんだと真剣な眼差しを向けた。
「ちょ、ちょっと何、どうしちゃったの?」
仕事の顔へと変えたグウェンダルよりも早く――ユーリが声を上げた。
言いたい事を先に言われて、また眉間に皺を寄せるグウェンダル。
「あら、いたんですか、陛下」
「なっ、何ですか!陛下に向かってその言い方は。無礼ですよ!」
「ああ他にもいたんですね、気づかなかったわ」
「なっ!」
「…そんな事はどうでもいい。何で諜報部員が欲しいんだ……ここでは言えない事か?」
グウェンダルの執務室には、「そんな事って…」とショックを受けたギュンターと、陛下であるユーリやその護衛であるコンラートがいた。
今日はここで、書類整理をしているみたいだ。
――ここでは言えない事。
大事であるならば尚更、陛下に進言する前に――確認や状況を整理して、報告すべきだと考えているグウェンダルは、オリーヴにそう尋ねた。
そんなグウェンダルを不機嫌そうに見遣ったオリーヴは――、
ダンッ
一枚の紙をグウェンダルの机に、叩きつけた。
「……なんだ…」
その動作に、またこの紙に、グウェンダルは眉をひそめた。
「いいから、早くそれ読んで」
正面に立っているオリーヴを訝しみながらも、叩きつけられた紙を掴み目を通す。
後ろから、ひょっこり、ユーリとコンラート、ギュンターも覗いていて、それに気づいたグウェンダルは、またも眉間に皺を寄せた。が――…彼らに注意はしなかった。
溜息を吐きながら、文面を黙読すれば――…
“地球へ帰る術を探す為、旅に出ようと思う(・∀・)
ひょっこり地球に帰っているかもしれぬので、心配するな。
まぁ…帰れぬとも、どっかの街で働きながら、人生を謳歌するぞー。
自力で生きてゆきますヾ(*´ω`)ノ゙www
よって、私の事は探さなくて善いからな!特に軍人とか寄越すのやめてくれw
私のことは忘れてくれー。それでは、皆様…達者でな!
by 土方サクラ”
ひょっこり地球に帰っているかもしれぬので、心配するな。
まぁ…帰れぬとも、どっかの街で働きながら、人生を謳歌するぞー。
自力で生きてゆきますヾ(*´ω`)ノ゙www
よって、私の事は探さなくて善いからな!特に軍人とか寄越すのやめてくれw
私のことは忘れてくれー。それでは、皆様…達者でな!
by 土方サクラ”
____全員が全員、頭を抱えた。
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