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衝撃!フォンヴォルテール卿グウェンダルがついに密会っ!?

ご婦人にも人気な真面目なフォンヴォルテール卿グウェンダルが、この度、魔王陛下であらせられるユーリ陛下と愛の逃避行をしている事が発覚。

今まで浮いた噂が一つもなかったフォンヴォルテール卿、運命のお相手はなんとユーリ陛下であるという。

今後はユーリ陛下の婚約者、実の弟のフォンビーレフェルト卿と争う事になりそう。泥沼の三角関係の行方は如何に!







――と言う切り出し方はどうだろうか…。


今、グウェンダルは……、日が暮れた薄暗いこの広い砂漠で、ユーリに迫っていた。

あのグウェンダルが、あの堅物のグウェンダルが、ごそごそユーリの……何処か分からぬが、ユーリの体をごそごそと触っている。この状況をどう解釈すればよいのだ!

「お邪魔ですね、後は若いもんだけで…」とか言って、何処かに姿を消すべきであろうか?でも何処に?

今、己たちが身を休めているここは、岩やちょいちょい草が生えている荒野だ。

時間も時間でしかも逃げてる現状で宿に泊まる事など出来るはずもなく、野宿が出来そうなここに身を隠しておるのだが――……ここら辺りには、岩はあるけど、頭隠して尻隠さず状態になりそうな微妙な大きさの岩しかない。逃げ場なしである。


嗚呼ッ!一番大事な事を忘れていた!

私とグウェンダルは鎖で繋がっているではないかー!!どうしたらいいのだー!


『(ぬおぉぉぉぉー!!)』


他人の恋愛事情など見たくなどないわーっ!と悶えながら、視線はがっちり外さぬ私。


「ちょっと、なにやってんのよ!」


そんな時ユーリの隣にいた…いたのだな、オリーヴがグウェンダルに声を荒げた。一瞬、覗き見している私に言っておるのかと、肩をビクつかせてしまった。

それでもグウェンダルはユーリに覆う被さるのを止めなくて。オリーヴの声に我に返ったのかユーリが負けじと声を出す。


「まさかあんたまで、おおおおれを女かもしんないと思っちゃってて、この際おとこか女か確かめようなんてベルトベルトっ」

「待て」

「そんなん待てるかよっ。うわー信じられねぇ大ショック! 十六年も真面目に生きてきて、ここにきて女子と疑われるなんてッ! 修学旅行の男子風呂でも平均とそんなに変わりなかったのにーっ!」


はた目から見ればユーリはグウェンに、襲われているようしか見えぬだが、ユーリはグウェンダルが性別確認をしていると捉えたらしい。パニックになっているユーリ。

だが、オリーヴとユーリの言葉に、誤解を受けていると焦ったグウェンダルは、間髪入れずに否定した。


「待て、落ち着け。お前の性別を疑ったことはないし、女に見えるとも思わない」

「……だよな?どの角度から観察しても、おれって普通に男だよな?」

「ああ」

「顔も声も服も動きも言葉遣いも、飯の食い方も男だよな」

「間違いなく」


ユーリが落ち着く様に、一つ一つ否定するグウェンダルにユーリも少し落ち着いてきた。そこで気付く、じゃあ何故触ってきたのか…。


「……じゃあどうしてベルト外そうとしてるんだよ……あーっまさかアンタ弟と同じ趣味で、ファイト一発しよーとしてんじゃねぇだろうなっ!?」

「違う!」


誤解が解けて安堵した彼にとって有り得ぬ方向からの誤解が、また降りかかってきたので思わず叫ぶ。

この広い荒野にグウェンダルの声が響いて聞こえた。 近所迷惑の心配はない。

だけどそれを否定する声がまた響く。 近所迷惑の心配はない。


「ウソっ! あたしにはフォンヴォルテール卿が陛下を襲っているようにしか見えなかったわっ! 白状したらどうなのッ!狙ってたんでしょッ!」

『私も…貴様が襲っておるのかと思ったぞ。てっきりスクープかと…で、どうなのだ?』

「え…やっぱり……」


オリーヴと私の言葉に我々三人の疑いの眼が、犯人グウェンダルに集まる。


「ち、違うっ!!」

「フォンヴォルテール卿、お認めになった方が身のためよ?大丈夫、今なら間に合うわっ、ね?サクラ様」

『まぁ…犯人は必ず最初は犯行を認めぬしな』


私がそう答えると、グウェンダルは好奇の眼を向けてくるオリーヴに冷たい眼をプレゼントしたのち、ユーリの腰から何かを取り出した。

見覚えのあるキーホルダーだ。



『……イルカのキーホルダー?』

「……ああ、なんだ。バンドウくんかぁ。だったら最初からそう言えよー。やるよ」

「なんなのよー紛らわしい」

『何を期待しておったのだ…』


ユーリがグウェンダルにキーホルダーを譲っている姿を見ながら、オリーヴに呟く。覗き見する気満々だった己の事は棚の上に置いとく。

堅気なあやつの弱みを握りたかったらしい。オリーヴは本人を前にしてそう口にした。

なんだろう…。前から思っておったが……眞魔国の女性って美形な見た目に似合わず…たくましい女性が多いような…。



「名前は?」

「バンドウくん……か、エイジくん」

「バンドウエイジか。 可愛いな」

『……水を差すようで悪いが、本物は可愛くないからな』


――バンドウエイジだとだが。

乾いた土地でサクラとユーリの乾いた笑いだけが残った。







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