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 第三話【覚醒】






――死神とは―――…

あの世とこの世の迷いし魂をしかるべき場所に送り、また、現世を荒らす悪霊から現世を護ったり、尸魂界と現世にある魂魄の量を均等に保つことが役目の調整者の事である。


今は違くとも、力を持っている限り死神であり、例え肉体が人間であろうとも私は魂の底から死神なのだ。

それ故に――…誇りだってある。

私達は何かを守る為に戦う。そしてこれは…命を守るための戦い。

本来、生きておる人間の命に、緊急時以外は手を出したりはしないが……刃向かってくるのなら容赦はせぬ。


『縛道の一、塞!!』


向かってくる賊の手足の動きを封じ、気絶させる。 その行動を繰り返しながらひたすら船板へと走る。

万が一意識が戻っても、鬼道という術をかけておる限りコイツらは動けまい。


あちらこちらで悲鳴が聞こえるこの中で、私は私の呼吸音しか感じないくらいに神経が昂っていた。

皮肉にも危機的この状況で、戦いの感覚が体の中に戻ったみたいだ。 近くにいる敵が何人いるのかまで把握が出来る。


《主、まだ敵は多い!》

『あぁ、上等だっ!』


青龍の声が頭の中に響くのを聞き、自然と笑みが零れる。


『ゆくぞっ!青龍!』





船板に出ると久しく嗅いでいなかった血の匂いがした。

大方、抵抗した船員たちの血だろう。乗客達は何か所かに固まって震えている。


《むごい事をする》


船内よりここの状況は悲惨だった。 目で見る情報より鼻からの情報が鮮明に感じる。


『クソっ!何故、何故平気で殺せるのだっ!!』


もっと早く来ていれば…そんな事ばかりが頭に駆け巡る。――怒りでどうにかなりそうだ!


《……》


半ば自棄気味に、直接剣を振り下ろしていく。 次々に賊を峰打ちして行くと――…海賊のボスらしきセーラー服を来た愉快なおっさんに、客を人質にされ抵抗する事が出来なくなった。


『ちっ』


青龍も取り上げられて、降伏せざるおえなくなり、抵抗していた人や男性は一か所に集めれておったので――いつの間にかそこにいたコンラッドやヨザックの元に向かう。

向かいながら深呼吸して闘いの中で産まれた興奮を落ち着ける。ドクドクと脈が打っておる。


コンラッドはサクラに気づくと頭から足の下まで眺め、何処にも怪我がないのを確認すると安堵した。

サクラもサクラで、コンラッドの体を眺めて怪我がないのを確認しホっとした。


「良かった、無事で」

『あぁ』


周りを探してもユーリやヴォルフラムがいない。 だが、ここにコンラッドがいるのだからきっと無事に隠れておるのだろう。

そうコンラッドを見ると笑みで答えをくれた。


「ひゅ〜流石、姫さん!返り血すら浴びていない」

『当たり前だ! 斬ってはいないからな』

「え?でも剣を振り回していたでしょ〜よ?」

『あれは峰打ちだ。気絶させただけだ』

「かー!甘いですね!!」

「ヨザっ!」


命を取らなかったサクラにヨザックは甘いと指摘し、それをコンラッドが諌める。

サクラとしても重々甘いと自負しているので、反論はしないし、ヨザックも非難しているわけではないので別に怒りはしない。


『二次被害ならぬように、意識が戻っても動けぬくらいの打撃は与えておるから問題はない。 だが…目の前で貴様たちが殺られそうになったら、迷うことなく殺るだろうがな』


余裕があるから峰打ちで、大切な人の危機なら牙をむく。


――つまりオレたちが大切って事!? サクラの言葉を復唱するとそうなった。


「っっっ」

『何故、貴様は照れているのだ?』

「天然すぎるっ」

『うぬ? いい加減その顔止めぬか!キモいわっ!!』


ヨザックとの間にいい空気が流れたのに、その本人に一刀両断されたヨザック、哀れ…。

イラッとしたが、ちょっと不憫に思うコンラッドであった。



『あ、』


前方から賊の集団にユーリとヴォルフラムを見つけた。二人とも遠目で見る限り怪我はなく良かったのだが、様子がおかしい。

何かに絶句しているユーリの横には…不機嫌なヴォルフラム。


『(何があったんだ?)』



実際は、海賊なのにセーラー服を着た頭領…なんでスカート!?なんてショックを受けているユーリと、賊との戦いをユーリに命令で止められた複雑な心境のヴォルフラムだったのだが――……



____それをサクラが知る総べはなかった。








(ヨザック…お前、あんまりサクラに近づくな)
(ちょっ!!たいちょー横暴!)
(………」
((うわっ!視線だけで殺されそう))



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