異文化コミュニケーション。
この場合は異世界コミュニケーションと言えば善いのか?とにかく異世界の壁を通り越して、コミュニケーションを――…。
――って、ちょっと待て!
お互いの文化でコミュニケーションを図る訳だから、何も私がこちらの常識に合わせる必要はない筈だ。
うぬ、とりあえず整理してみよう。
相手の左頬を平手で打つのは、古式ゆかしく伝統に則った方法であり、打たれたものが右頬も差し出せば、願いを受け入れるという返事になる。貴族の間での求婚行為。(byギュンター)
『のわぁぁぁぁぁ!!納得出来るかーっ!』
「だよなー。判るよ…その気持ち。おれもカルチャーショックだったよ」
『なに?まさかユーリも?求婚されて…』
現状を把握しても納得できる筈がなく、思わず椅子から立ち上がった所でユーリからの新事実。
王だから、確かに婚約者はいて当たり前かもしれぬが――同級生のスキャンダルに驚く。
「いや、おれの場合…こうカーッとなってバシっと!」
『あー…それでビンタした訳か。…相手は?』
「ボクだ」
『…え?』
「だからユーリの婚約者はこのボクだっ!」
『えぇぇぇ!!!……だが、貴様らは男同士であろう?』
「サクラ、男同士でもこちらでは普通のことなんだ」
衝 撃 的!
コンラッドの説明を訊きながら唖然とユーリとヴォルフラムを見つめる。
二人はまだ言い争いをしておるが、それもイチャついている様にも見えなくもない。
『(有りだな)』
ユーリには悪いが案外お似合いだ。 ヴォルフラムものすっごい可愛いから、微笑ましい。
――あれが俗にいう“ツンデレ”かー。
生でBLありがとうございます。私は二人を応援します。ひっそり心の中で、誓いを立てた。
『(待てよ…婚約したところで、結局は地球に帰るのだし…大した問題ではないか)』
私は、ユーリと違ってここで使命など何もないのだから。―――心置きなく帰ってしまえばいい。
サクラは胸にある違和感に気づかぬふりをして、そう考えた。
「そう言えばサクラ様、この本…こちらにいらした時に濡れてしまっているみたいですので、一応乾かしますね」
――元の様に綺麗な状態まで復元出来ないとは思いますが…。
そう続けるギュンターに、何だ?と思いつつ彼が持っておる手元を覗き込むと、一冊の漫画が。
――漫画が…。
―――漫画が………。
『あー!!私のONE●●ECEがっ!!!』
サクラの大声で、皆がぎょっと私の服を見た。
「ワンピース?」
「ワンピースならいくらでも替えはある。なにもそこまで…」
「いや違うんだ…ワンピースじゃなくて、多分O●EPIE●Eじゃないかと」
「陛下、どのワンピースですが…?」
「陛下って呼ぶなよ、名付け親!その服じゃなくて!!」
「なにっ!?男かっ!!」
「あー!なんでそうなるんだよっ!やめろっ!!ヴォルフラムっ」
外野がなにやらカオスになっておるが、そんな事どうでも善かった。
3か月待ってやっと買った新刊だったのに……水浸しとか有り得ぬ……。また新品を買いに行くとして、いつ地球へ帰れるというのだ。
私の頭の中でここ3か月の記憶が走馬灯の様に浮かんでくる。まだかまだかと待っておったのに――…。
関係ない記憶、テスト勉強などもしたなーなど思い出していたら…ふと、引っかかる事があった。
『(眞魔国…渋谷有利、魔王、スタツア……ビンタに婚約…)』
――あれ?もしかしなくても…。
『(今日からマ王っ!!?嘘〜!)』
地球で渋谷有利に出会った時点で気づくべきだったぞ…私…。
――皆と違う世界に生まれちゃったのだな……。
サクラは悲しく笑みを浮かべた。
『スタツアするなら、ONE●●ECEの世界が善かったー』
今日一日で、いろんな事がありすぎて疲れてしまったのだろう。それだけ呟いて私の意識は途切れた。
だから、肝心な事を忘れてしまっていた。
――何故、青龍をコンラッドが持っておったのか――…。
――何故、コンラッドが求婚してきたのか――…。
_____そう全ては繋がっているのだ。
(おかえり、サクラ)
(貴方の魂が在るべき場所へ)
to be continued...