思わず出た言葉を恨む
その時は、知る由もなかったが思えば、ここから私の運命は変化を始めていたのかもしれない。
ベルとフランに連れてこられたのは、大きな古城。なんで暗殺部隊がこんな所に住んでいるのかと思ったが、そこに住んでいるのが彼らだと思えば不思議と納得できた。
大きな門を潜り抜け、通された部屋には長いテーブルと、沢山の椅子。そして、一番奥にある椅子だけがなぜかひときわ豪華だった。
多少薄暗く、物々しげな雰囲気が漂っていたことを差し引いても、言葉を失ってしまうほどに豪華な作りをしているところだった。
唖然としながらも、キョロキョロと辺りを見回しているとベルとフランがやっと手を放してくれた。
「んじゃ、オレはボス呼んで来るから」
そう言って、部屋を出ていく。残された私は、フランさんに視線を向けると、「すぐ来ると思うのでーちょっと待っててくださいー」といった。
まぁ、待つのはいいんだけど。
しばらく知ると、今まで静かだった部屋が、一気に騒がしくなった。
「う゛お゛ぉい!!」思わず耳をふさぎたくなるような大声を出しながら、部屋に入ってきたのは、きれいな長い銀髪をひるがえしながら歩く男。…S・スクアーロ。
「あらん!想像以上に可愛いこねぇ!!」
体をくねくねさせながら、近づいてくるルッスーリアにラピスは、少しずつ後ずさりながら苦笑いを浮かべる。
「おい、テメェオカマ。姫が怖がってんだろ」
ヒュッと投げつけられたナイフをルッスーリアはどこから取り出したのか、銀製のトレイで見事に弾き返した。
「んもう!危ないわよベルちゃん!」
「うっせ」
「あ、あの…」
呼ばれてきておいてなんだが、あまりにもこの空気は自由すぎやしないか。本当にここは暗殺部隊のアジトなのかとラピスが半ば失礼な思考に入りかけていると、ふと気になるものが視界に映る。
他の人たちとは、明らかに違う雰囲気をまとった、男。そして、その男の姿を見たラピスの目が、徐々に大きく見開かれていく。
「U世(セコーンド)…」
ぽつりとつぶやいたその言葉に、その場にいる全員が反応を見せる。
そして、U世と言われた張本人が不服そうに口を開いた。
「どういう意味だ…」
「あ、いえ!何でもないです!…ただ、ちょっと知り合いに似てただけで…」
「知り合い?」
ベルが、訝しげに首をかしげると、ルッスーリアも首を縦に振る。
「確かにそうよねぇ?U世ってボンゴレU世のことでしょう?ボスに似てるって噂よねぇ?」
そういう、ルッスーリアがスクアーロに同意を求めるとその通りだというように首肯する。
「あ゛ぁ…お前、知り合いってどういうことだ?」
「あ」
思わず口を押えて、軽率すぎる自分を恨む。
馬鹿か私は。これじゃ怪しんでくれと言っているようなものじゃないか。
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