共に歩むことを望めば





それから、地に落ちた人間の心臓が動くことはなかった。まるで、時を止められた彫像のように微動だにしない。当たり前だ。彼らの体の組織はもう活動することがないのだから。




「…終わり」




ぽつりとラピスが呟いて、空を仰ぎ見る。そして、今まで背を向けていたべルたちの方を振り返ると、訝しげな視線を向ける。




「いかないんですか?」




主力戦での鍵となる人物はもう倒した。ここにもうミルフィオーレはいない。長居は無用。

それなのに、彼らはその場から一歩も動こうとしない。じっとただ黙って私に視線を向けてくる。




「…何ですか?」




向けられる視線に耐えきれずに問いかけると、ベルは面白そうに笑う。




「なぁ、姫。一緒に来いよ」




一瞬「姫」と呼ばれたのが誰だかわからず首を傾けたが、此処に女は私一人しかいないしどうやら私のことのようだ。

そこまで思考が追いつくと、次に新たな疑問。一緒に?それは、どういう意味なのか。

考えていても埒が明かないので素直にその疑問を口にすると、カエルを被った人の方が答えてくれた。




「今ーボンゴレってかなり危ない状況なんですよーなんで、協力してもらえたらなーって。そうですよねーセンパイ」




間延びした口調で、隣のベルに同意を求めたフランは賛同の言葉の代わりにナイフを受け取らされる。

ゲロッと言って瞳に涙を浮かべるが、全くと言っていいほど表情が変わっていない。




「私が、協力?」




さすがに、驚いた。だって、協力とかそういうもの、求めちゃいけない存在だと思っていたから。

そして、はたと気づく。

私のことを拒絶していたのは、あの時代のボンゴレ。この時代のボンゴレまでもが私を拒絶しているわけじゃないと。

また、ぬくもりを求めていいのかと、生意気にもそう思った。

でも、そんな思考はすぐに打ち消す。

私の生きる道に安息なんてあってはならない。

いずれ彼らも、私を残して逝ってしまうのだから。

それに、安息は知らず知らずのうちにあの時代の彼らへの憎悪でさえも掻き消していく。

そうなれば、私の心のうちから闇が消えれば私はもう生きられなくなる。

もう、ボンゴレを守れなくなる。

それだけは避けなくてはならない。




「ま、此処で話してても何ですしーボスのところ行きますかー」




そう言って、フランがラピスの右腕をつかんで歩き出す。すかさずベルがナイフを投げたが、フランは気にした風もなく歩く。




「え、あのちょっと…」

「いいからついてきてくださいー」




フランはラピスの意見に耳を傾ける気は毛頭ないようで、そのまますたすたと歩きだす。

ベルはというと、不機嫌そうにズカズカと私の隣まで来て、左腕を掴んで歩き出す。

これは、二人と手をつないでいるというよりかは、二人に連行されているという表現がふさわしいような…

ともかく、ラピスは、ボンゴレを守りやすくなるのは大歓迎だったので、半ば強制的に連れて行かれるのに身を任せていた。



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