始まりはいつも唐突に



全ての記憶が戻ったのは、あの時。

十年程前、並盛で巻き起こったリング争奪戦。

その夜は、丁度大空の守護者戦をやっていた。そして、私は偶然その場に居合わせた。

否、偶然ではないのかもしれない。

その前日の夜見た、夢が引っかかっていた。何かが起こる、その前触れのような気がして。



走って、走って、中学校へ向かった。

中学校の方から、時折眩い閃光が走る。

私は、不思議でならなかった。こんなにすごい光を放っているのに、誰一人として様子を見に行こうとしないことが。

そして、悟った。これは、普通の人間には到底係わり合いのできる代物ではないのだと。


息苦しくなってきて、心臓がどうにかなるんじゃないかというくらいに早鐘を打つ。

やっとのことで並中にたどり着き、転がり込むようにして、グラウンドに入ると異様な光景が目に飛び込んできた。

グラウンドでは、地面に倒れ付して血反吐を吐く黒髪の男。そのよこに、金髪の少年と、宙に浮くフードの赤ん坊。

その周りを取り囲むように、ツナや獄寺、山本。京子のお兄ちゃんや、風紀委員長の雲雀恭弥がいる。

知らない顔も沢山あったけど、私は目を見開いたまま動けなかった。







ドクン







また、あの時と同じ。胸の奥底で脈動する何か。







ドクン、ドクン







徐々に、それは激しさを増していく。

走って、息苦しくて早鐘を打っていた時とは全く違う。体の奥底、精神に近い部分が何かを訴えかけているような鼓動。







ドクン







ドクン







ドクン








そして、記憶は流れ込んできた。




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