20
そのまま委員長に手を引かれながら歩くこと数分。
並盛商店街の、道のど真ん中で委員長は止まる。
もちろん、委員長が歩くだけで人がぶわーってよけてくんだけどさ。
「いいんちょーどうしましたー」
「別になんでもない」
ありゃりゃ。やっぱり普段通りの委員長。
「次は」
「へ?」
「次はどこ行くの?」
「次ですか〜?えっと、う〜〜ん」
うぬぬぬぬ…と眉間にしわを寄せながら考えていると、委員長は決まるまで待ってくれるようで。
そのまま足を止めてくれた。
でもな〜委員長とケーキ屋行ってもなー甘いもの嫌いそうな顔してるしなー。服とか買いたいけど委員長といってもなー
…見回りする気ねぇじゃねぇかっていうツッコミはご遠慮ください。本来わたくしこの時間は、部屋でゴロンゴロンしてる時間なのです。
自由を私に!!
とか何とか言ってるうちに、聞き捨てならない音が聞こえてくる。
ゴッという誰かが誰かを殴る音。…明らかに不良の喧嘩だ。
「委員長!喧嘩ですよ!止めなきゃ!!」
グイグイ手を引いても委員長は動かない。
ちょっと苛々して委員長の顔を覗き込んで、私は言葉を失った。
…なんか、痛そう。
眉をしかめて、俯いて唇をかみしめて。
何か痛みをこらえるような委員長の様子に、私は一つ息を吐く。
「やっぱり、委員長具合悪いんじゃないですか!私がとめてくるんでちょっと待ってて下さい」
そういって、喧嘩をしている不良共めがけて走った。
具合が悪い?違う。
本当は、殴り合いの音が聞こえたとき真っ先に走って行ってトンファーで相手を殴りつけたかった。
でも、それができなかった。
何でって、あの時の君の顔が重なって見えてしまうから。
―――なんでけんかなんかしてくるの!!
しょうがないじゃないか。むれてるやつらがわるい。
まだ、小さい僕は、たどたどしい口調でそう言うと小さな君は眉にしわを寄せる。
そして、握りしめた拳を震わせて目に涙をためながら言ったんだ。
―――けんかするきょうやくんなんかまっくろのおじちゃんたちとおんなじだ!!
そういって、僕の前から走り去っていった。
「きょうやくんなんてなまえもないけいじのひとにつかまっちゃえ!」とか何とか意味不明な捨て台詞を残していったけど。
まっくろのおじちゃんっていうのは、その頃楓と見てたアニメの敵キャラクターで。
主人公を苦しめるその男たちを楓は毛嫌いしていて。
その男たちとおんなじって言われて、少なからずショックを受けた僕はそれから、楓の前で戦うのをやめた。
前みたいに、拒絶されたら。
そんな思いが込み上げてきて、トンファーを握ることができなくなる。…弱いなと自分でも思う。
でも、後悔はしてな「委員ちょーー!これどうします――!」
…今、僕いいこと言おうとしてなかったか?シリアスな雰囲気が台無しじゃないか。
やれやれとため息をつきながら声のしたほうに目を向けると、一瞬これは幻かと思った。
だって、中学生のそれも女が、高校生くらいの大の男×2の首根っこを引っ掴んでずりずりと引きずっている様子を見たら誰だってそう思うだろう。
そうだよね。うん、僕が普通なんだ。おかしいのはこいつだ。
「なに、それ」
「ん?ゴミ!」
いやいや、そんな笑顔で言わなくても。
しかも、後ろの男たち涙目だよ?何したの君。
「とりあえず」
「うん?」
「その辺に捨てときな」
「了解です!」
こういうこと平気で言える僕も、普通とはかけ離れてるんだろうけど。
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