あいでんてぃてぃ




任務を終えて、ボンゴレ本部へと戻る。

その瞬間に、視界に映る桃色。


「………狂い桜」


時期外れにもほどがある。

春が来るとは言ったが、まだまだ雪も解けきっていない。こんな時期に桜が咲くはずはない。

更に気分が悪くなってくる。

イライラと募ってくる怒りに舌打ちをしながらも足早にその場を去ろうとその桃色の忌まわしき物質から目を背けようとしたその時。

視界の端に、映った、影。

絶対に、いる筈のない人物。

どうして、君が……



「恭、弥だよね?」



懐かしい、声。

少し大人びてはいるけれど、変わらない心地のいい柔らかい声。


「**……?」


確認するように、名前を呟く。少し声が震えてしまったのは、名前を口にした瞬間に君が消え去ってしまうのではないのかと思ったからだ。

でも、君は消えなかった。

僕が名前を呼ぶと、幼い時と変わらないようなあのふわりとした笑顔をこちらに向けて。



「久しぶりだね、恭弥」



会いに来ちゃった、と笑う君。

それと同時に心に宿る、喜びと絶望。

君にまた会えたという喜びと、君をこの世界に巻き込んでしまったのかもしれないという絶望。

相反する二つが同時に押し寄せた。


「……どう、して?」


結局、出てきたのはそんな安っぽい言葉で。

久しぶりだねと言って頭を撫でてあげることも、会いに来てくれてうれしいと抱きしめることも僕にはできない。

する資格なんてない。



「まさか、恭弥がボンゴレの雲の幹部さんだったなんて」


「…ッ!」


緩やかに、流れるように紡ぎだされるその言葉。彼女は知っているのか、自分が、裏の人間であるという事を。



「ちょっとびっくりしたんだよ?私だって相当な覚悟してきたのに……」


「**?」


「ね、また一緒にいられるんだよ」









そう言って笑った君は、今まで見てきたどんなものよりも綺麗だった。























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