はじめに
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まずは、すんごいくだらない私の兄と、とんでもなく変態な私の上司の話から、始めようか。
「今日もかわいいねミモ、」「はーい死んでください」
かました蹴りはあっさり避けられた。くそ、むかつく。
「暴力的なところも僕好みで好きだよ」
「さらっと変態発言しないでくれますー?」
笑顔とジト目を同時に行うという奇跡の表情をしてみれば、それはそれは良い笑顔が返ってきました。ほんと死にたい。
誰かこのネジ抜け司令塔を抹殺してくれないかなあ。ああでもこの人、生き返っちゃうんだっけ?そういえば。
「明日はいよいよウォーゲーム、の始まりでしょー?とっと寝ろよこの屑上司」
「やだなあ、ミモ。口が悪くなってるよ」
ニコニコしながら完璧なツッコミ。当たり前だろ、お前をイラつかせるためだけにやってるんですよこのアホ上司。
「ところで兄さん知りませんー?あの人、行方知れずなんですケド」
「ああ、ゼノウ?それなら――」
ますます笑みを深めたファントムを見て、私は嫌な予感を覚えた。
「あそこ(玉座)でのたうちまわってるよ」
「……あした……!やっと、明日……!!」
ファントムの指さす先を見て、私は一気に落胆した。
急速に萎えていく私の顔を見て、ファントムはそれはそれは愉快そうに笑う。
「相変わらず、君のお兄さんは6年前からアルヴィス君が大好きみたいだねえ」
「……死ねアホ兄……」
私はげんなりため息をつき背を向けて、悶えるアホ兄ともすっとぼけた司令塔とも別れを告げた。
「……やっと、やっと明日、6年ぶりにアルヴィスを見られる……!」
「……なんっで敵なのに、んでもって男なのに、惚れちゃったりしてるんですかねえ兄さんは……!!」
……告げた、はずだった。
これは、そんなナイトクラスの兄妹2人が好き勝手してみたり怠惰に過ごしてみたりする――
つまり、そういう非常にくだらない話、なのである。