背徳の華 | ナノ



別離

■ ■ ■


「沙良」

その白い服が死装束となるのに、

「…何、沢田綱吉」

その黒いリボンが君の存在の枷となるのに、

「……ううん。ただ…」

その艶やかな瞳がじきに閉じられてしまうのに。


「…気をつけて、いってらっしゃい」


ー俺には、何ひとつ告げられないんだ。




「……うん」
沙良は、彼は目を細め、頷いた。
一度だけドレスワンピの裾をはためかせ、こちらを振り返りもせず歩いていく。
紛れもないー死のもとへ。



「……沙良」

思う。
叶いもしない願望を、悲しみを。

君が、"ボンゴレの華"でなかったなら。
君が、その白い正装に身を包むのでなかったなら。
君が、男でなかったのならー。


立ちすくみ白い背中を見送る綱吉の頬に、
一筋の涙が音も無く滑り、地へ落ちた。






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