無限ループ/シリアス
■ ■ ■
「ごめん、もうお前のこと好きじゃなくなっちゃった」
「……え」
金髪が、ほがらかに告げる。
いつもとなんら変わりない、屈託の無い明るい笑顔で。
「それに俺、跡継ぎいるし。やっぱり男同士は辛いよな」
「……でぃー、の?」
「いきなりごめんな、伊織!」
発した声は震えていた。
でも目の前の男はニッコリ笑う。
ぜんぜん、これっぽっちもなんとも思ってなさそうに。
「じゃあ、またな!伊織」
「え、まっ、まってよディーノ、」
必死で呼びかける。行きかけたパーカーの袖を掴む。
「何?伊織」
「お、お前が好きじゃなくなったら、俺は一体どうすればいいんだよ」
「え?」
キョトン、ディーノが首をかしげる。
「そんなん、伊織なら大丈夫だろ」
「……は?」
「他の奴を、好きになればいいんだ」
あんまりに綺麗に笑われて、今度こそ言葉が喉に詰まった。
がばり。
「……な、ゆ、夢……」
ベッドの上、はあはあと荒い息を繰り返してシーツを握る。
まだ薄明るいベッドの上、隣にはあの金髪馬鹿がいるはずだ。そうだ。
ーなんてバカバカしい夢を見たんだろう。そう思って、伊織は安堵と呆れのまざったため息をつく。
良かった、夢で。なんて、
「伊織」
声をかけられ、ふと横を見た。
寝ているとばかりおもった金髪馬鹿が、ちょこんと起き上がり、なぜか申し訳なさそうな顔でこっちを見ている。
「……何、どしたのディーノ」
「あのさ」
少しだけ、言いづらそうにーけれどいつも通りの笑顔で、恋人は口を開いた。
「……ごめん、俺、もうお前のこと……」