Blood&Tears | ナノ
Change the eyes
「…な、」
目を大きく見開き何か言いかけた瑠久は、
ぐっと口を閉ざすと、次の瞬間ぱっと背を向け大きく一歩踏み出した。
「まっ、」
待ちなよ。
思わず伸ばした指先が、瑠久の服の裾をかろうじて掴んだ。
「瑠久、」「放せ!」

パシッ。

雲雀はまばたきを繰り返し、振り払われた手を見つめた。
軽い音を立てて払われた手は、差しのばしたままの滑稽な格好で空をさまよう。

「…瑠久…?」
「触るな」

呆然と、見つめ返す。
開け放した窓の向こう、
肩で息をしながら、こちらをぎらぎらと見据える黒い瞳。

え?

「もう、嫌なんだ」
瑠久がぱっと首をそむけた。
視線が合わないまま、ただ言葉だけが紡がれる。


「恭弥に、なんにもない目で見られるのは…ッ」


今度こそ駆け出した小さな背中を、
雲雀は窓の内側でただ見送った。






「……なん、なの」

なんにもない目、ってなに。
わからない。わからなかった。
いつの間にか鳥の姿は消え、授業が終わった廊下にはまばらな人影が現れ始めていた。


『じゃっ、俺きっと馬鹿なんだ』


そう言って頬を上気させ笑った、瑠久の笑顔が浮かばない。
あんなに綺麗に笑う人間を、初めて見たと確かに思ったはずだったのに。

「……瑠久」

一瞬こちらを突き刺すように見た瑠久の目は、
今にも泣き出しそうで、苦しそうで。


ねえ、どうしてそんな目をしているの。



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