Blood&Tears | ナノ
The last moment
泣きそうな骸の瞳を見た瞬間、
全てがわかってしまった気がした。

雲雀を操ってまでしたことの意味も、
お菓子を分け合って食べた時の笑顔も、
体を抱きしめた時の手の暖かさも、

全部、全部。


「ー骸、」
「僕は、君が…」

震える指先。頬をなぞっては、力無く落ちていく。
語尾を失っていく骸の唇を見つめて、瑠久は顔をゆがめた。

馬鹿だな、骸。
ゆるんだ蔦の拘束から、手首を上げる。
わざとらしい蔦のゆるみ。元から捕らえる気なんてないのだ、きっと。
バカだな。

ーそんな痛々しい顔、して。


「……瑠久、」
「ごめん、骸」

伸ばした指で、頭上をおおう骸の頬にそっと触れる。
泣き出しそうな顔をした相手の、その目元をなぞるようにして、そして。


「俺は、恭弥を愛してる」
だから、でも。


「…骸の気持ちには、答えられない」


だからこそー俺は。





涙が落ちる。頬に当たる。
滑り落ちていくその熱を感じながら、瑠久は小さく口を開いた。

正直、許さないと思っていた。
自分を騙して嘘をついて、
何より恭弥を操って、傷付けて。
でも、でもー。


「……また、いっしょにお菓子食べよう。骸」


あの日、菓子を分け合い笑った瞬間はー間違いなく、たしかなものだった、から。



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