偽りのツバサ | ナノ
まさかまさかのご指名

(……間に合え!)

 空を切る音とともに迫り来る看板から、うずくまる2人を助けようと手を伸ばした、
 刹那。


『……身を滅ぼすその覚悟、気に入った』


「――?!」

 耳元で、あの獣の声がした。


***




「……おまえの巧断も特級らしいな」

 に、と笑うゴーグルの奥、
 覗く顔は自分の直感どおり、やはりなかなかの美形だった。

「……そこのおまえもな」
「!瑠依さんっ、」
「わお」

 突如向けられたエイの頭に、しかしへら、と笑って瑠依は軽く腕を薙いだ。
 途端、
 白く瞬き消滅する、波の攻撃。

「……あんだけでっけー看板を燃やした炎に、俺の波を消した光……お前ら、気に入った」
「……やば、イケメンの方からアプローチされちゃったよ」

 へらり、とどこまでもゆるく笑う瑠依に、険しい表情で相手を見据える小狼。
 ちなみに、はるか背後で「あいつはどこまでも……」と黒鋼が小さくぼやいていた。

「俺は浅黄笙悟だ。お前らは?」
「瑠依っていいますー」
「……小狼」

 対する答えの温度差はなかなか激しかったが、笙悟は気にした様子もなく嬉しそうに口角を上げた。

「笙悟!警察だ!」
「ああ?……ちぇっ、今からいいトコだったのによ」
 ふう、と息を吐き、笙悟は勢いよく片腕を振り上げる。

「ヤローども!散れ!!」
「「「「「FOWOOO!!!」」」」

 その声を合図に、ゴーグル集団はすばやく散らばり姿を消した。

「……瑠依、小狼、」

 最後に、


「次、会った時が楽しみだぜ!!」


 楽しげに張り上げられた、笙悟の声を残して。 


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