偽りのツバサ | ナノ
素敵な買い物を

「……つうわけで瑠依もご飯終わったし、サクラちゃんの記憶の羽根を早よ探すためにも、この辺探索してみいや!」
「「はーい」」
「はい」
「……。」
 上から順に、瑠依、ファイ、小狼、無言の黒鋼。
 ちなみにモコナはむっすり顔の黒鋼の肩に乗っている。

「……ファイ、今息ぴったりだったね俺たち」
「そーだね瑠依くん」
「見た目俺のどストライクだし、やっぱこれは運命かもぐぇっ」
「ふざけたこと言ってねーで早く行くぞてめぇら」
「く……黒、いまマジで殴っただろ……ヤンデレ気質?」
「な、仲良いですね……」

 アホなやり取りを交わしていれば、若干苦笑気味の小狼の声。

「あ、寂しい思いさせてゴメン!大丈夫小狼、君は俺の揺るぎないマジかわ部門トップ……て、何その財布?」
「ま、まじかわ……?!あ、これは空汰さんが、昼食代にと……」
「まじ?!やったーっ、美味しいもん食べよー!」
「てめぇ、朝あんだけ断言したわりに目的が食いモンになってんじゃねーか……」

 あははと笑う瑠依に呆れた目を向ける黒鋼、
 仕方ないなあ、とへらり笑うファイに苦笑する小狼、

 なんとも騒がしい探索が、始まりを告げた。


***




「らっしゃい!……おっとそこのボウズ、めずらしー色の目ぇしてんな!」
「えっ、そー?」
「どうだ?!リンゴ買ってかねえか?」
「……ん?」

 いきなり声を掛けられたかと思えば、ずい、と差し出される赤い物体。

「……リンゴ?……あ、この世界では、ってことか……」
「それリンゴですか?」
「わっ」

 小さく呟いた瑠依の肩越し、ひょいっといきなり覗く小狼の顔。

「……び、びっくりしたよ小狼……」
「え、あ、すみません瑠依さん」

 真横、耳に吐息がかかるレベルで近い小狼の顔。
 首をひねった小狼もその距離間に気が付いたようで、目を開くとあたふたと慌てだした。

「や、俺にとってはハッピーイベントだけど」
「これがリンゴ以外のなんだっちゅうんだ」
 うっかり本音を漏らした瑠依の前、きょとんと聞き返す店主の男。

「え?小狼君の世界じゃこういうのじゃなかったー?」
「形はこうなんですけど、色がもっと薄い黄色で……」
 んん?と首をかたむけるファイに、説明しだす小狼。
「は?そりゃ梨だろ」
「いえ、ナシはもっと赤くてヘタが上にあって……」
「それラキの実でしょー?」
 黒鋼が割り込めば、さらにはてなマークの増える3人の空間。
 それを面白おかしく見ていた瑠依は、ただ1人頬を緩めた。

「で、いるのかいらんのかっ?!」
「わっ」「おうっ」「えー」
 ぎょっとし(あるいはへらりと)店主を見返した3人の前、

「「いるーーーー!!」」


 威勢の良い2人の声が、大きく響きわたった。


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