偽りのツバサ | ナノ
ここは阪神共和国

「あの魔女のねえちゃんとこから来たんやな。わいは有栖川空汰!」
「嵐です」
 朗らかに自己紹介する男に、ぺこりと頭を下げる黒髪の女性。

「うっわすっごく綺麗でうつく」
「ちなみにわいの愛する奥さんやからな!」
「しい……けど人妻かちくしょう!」

「瑠依くんちょーっと落ち着こうかー」
「てめぇは綺麗だったらなんでもいいのかよ!」
「は?!その通りに決まってんじゃん!!」
「なんでキレ気味なんだよ!」

 ぎゃーぎゃー騒き出す瑠依たちに、小狼がどうにもできずただあわあわする。
 そこへ、笑顔の空汰が黒鋼の肩に手を置いた。

「にーちゃん、わいのハニーに手出したらぶっ殺すでなっ!」
「なんっで俺に言うんだよ!!むしろあいつだろーがっ!」
「ヤダなー、俺さすがに人の物に手ぇ出す趣味はないよ」
「や、そうや!から大丈夫!」
「何が大丈夫なんだよ!意味わかんねぇよ!!」
 わいわいと騒々しい面子が嵐の鉄拳で収まるまで、あと20秒。


***




「……とりあえず、ここに来てプチラッキーやったな」
「えーっと、どのへんがー?」
 ファイの間延びした問いかけに、瑠依もまた首をかしげる。
「モコナは次に行く世界を選ばれへんのやろ?ここが最初なんて、幸せ以外の何もんでもないでー」

 ニッと笑い、引き戸に手を掛ける空汰。

「ここは、」

 ガラッと開けられた、その向こうには。



「阪神共和国やからな」



 見たこともない、華やかな街並みが広がっていた。


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