選択するはギブアップ
「……なぜためらった?」
「……ううー……俺も、わりとバカだなって、おもう」
咳き込み、立ち上がりかけて膝が崩れた。うわ最悪。
「「シー!!」」
後ろで叫ぶ声が聞こえた。ギンタの絶叫に、アルヴィスの珍しく焦った声。あ、ちょっと嬉しいかも。
げほげほみっともなくむせ返れば、足元に血が散った。ああそうだ、俺ケガしてたんだった。やっぱバカだ。
「……おかしな奴だな。まだ戦えるだろう?」
膝をついた俺の前、いつの間にか目の前にいたペタが俺の喉元に刃をつきつける。
どうせならそんなでっかい鎌じゃなくてダガーの方が扱い易いだろうに、なんてのんきな考えが浮かぶあたり、俺はどこまでもバカなんだろう。
まあ、死ぬ気はないけど。
「うん、戦えるんだけど……勝つには、全力出さなきゃいけないみたいだしい」
「……どうするつもりだ?」
「あは」
俺はニッコリ笑って、ペタから視線をスライドさせる。
視界の端、不安と心配、それから焦燥の入り混じる目が遠くに並んでいるのが見えた。誰かが叫んでいるのも聞こえる。
困ったなあ。こんなの俺のプライドに関わる上に、今最高に気分がのってるっていうのに。
俺はどうやら、彼らに正体をバラしたくない、っていう気持ちの方が勝ってしまうらしい。
「……ここでシーちゃん、ギブアップしまーす」