唐突なわがままを聞け
シャドーマン修行も無事終わり、俺のケガもホーリーアーム(スノウ姫より借りた)で完治して、もうこれは準備万端、さあ来いいざ来い4thバトル、みたいな個人的にけっこうな盛り上がりを見せてきたところで。
「……今回、俺は出ねぇ」
おっさんが唐突にわがまま言い出した。
「なっ……」「ほわ……」「ハ?」
即座に反応したのは3人。ギンタ、ナナシ、そして俺。
いやだって何言いだしてんだよこのニコ中。
今回のバトルは7人体制、つまりスノウ姫が修練の門に入った今、人数的にはピッタリな訳だ、そりゃあもう。
こんなおあつらえむきな人数なんて、あの白髪いかれ野郎が裏で手回してるんじゃないかと思うほどのちょっきり加減だ。それがこのおっさんが出ないとなれば、
「誰か2回出んことになんじゃん」
「お前が出ればいいだろうが、シー」
えっなんかスッゴイ軽く言われた。
「今回はお前らがどんくれぇマシになったか見届けてやるぜ。俺がいねーと負けちまうくらいなら……その程度の戦争だったって事だ!」
「ここでまさかのお試しぃ?」
「だからてめぇが2回出ろっつってんだシー。おめーはそのアホみたいな量の魔力をコントロールするって事を少しは学べ」
んなこと言われましてもねぇ。
「やったりましょ。オッサンなんぞいらへんわ!」
うわあナナシがくそいい笑顔。
ギンタもあっさり納得顔になってるし、前から思ってたけど単純すぎだろおまえ達。
と、ここでぐいっと腕を引っ張られる。
「は?」
「自分、ドロシーちゃんとシーちゃんがおればええねん!」
「ええい、うっとうしー!」
「痛い! 痛いでドロシーちゃん!!」
「いいぜドロシー、もっと殴れ!」
「シーちゃんあんた鬼か?!」
同じく反対側で引き寄せられたドロシーにエールを送れば、ナナシが半泣きで俺につっこんだ。
ぽくぽくとナナシを殴るドロシーと目が合う。
俺とドロシーは、同時にふっと笑い合った。
「えっ?! 今ものっそ良い顔やなかったシーちゃん?!」
「俺はいつでもいー顔してるよ?」
「痛い! なんで殴るん?!」
あれ、ふと俺は口元に手をやる。
今もしかして、無意識の内に笑ってた?
「……ナナシ、そろそろシーを離せ」
「えっアルちゃん顔怖い」
気が付けば真顔のアルヴィスがナナシの肩に手を置いている。ちょうど俺の腕を掴んだ方の肩を。
え?もしかしてこれアレ?嫉妬?
「お前はコントロールだけじゃなく少しは自重ってものを覚えろ」
「った! 本気で叩いただろアルヴィス!」
俺まで殴られた。理不尽じゃねコレ。