貸し借りはきちんとしたい主義
「ここはオイラが引き受けた!!」
「テラいけめんジャック君ガンバってー」
「シーの中途半端な応援、逆にやる気が削がれるんスけど?!」
あはっ。俺は笑って手を振った。
アンダータで辿り着いたレスターヴァ城、その入り口。
まずはお試しみたいに並んだチェスの下級兵軍団に、ジャックが勇ましく立ちはだかった。やだテライケメン。
「ジャック任せた!でも『オレを置いて先に行け』系は完全死亡フラグだから気を付けんだぞ!」
「何言ってんスかあんたは?!」
目の前、塞ごうとした巨漢を遠慮なくツインキラーで切り付ける。
背後、置いてけぼり(って言うのは間違いか)にしたジャックの声が追っかけてきたけど、俺はあえなくスルーした。
「お前は危機感というものを学べ」
「いやあ実戦が久々すぎてなまっちゃった」
「って言いながらさっきからアイリスでちょくちょくあちこち爆破させんのやめろよ、シー!!」
「だってこの方が進みやすくね?」
ギンタににっこり笑いかける。ああ、やっぱ楽しいな。
遠くでナナシが「シーちゃん絶対ドSやよなぁ」とボヤいていた。よし、全部終わったら覚えてろ盗賊。
そんなイマイチ緊迫感に欠ける会話をしながら城内へと飛び込めば、ズラリと並ぶトランプの兵士。……ん、ちょっと待て待て。
「あ、ココ俺に任せて決定!」
「ちょ、何ひとりで決めとんのや!なら自分も残るで!」
「仕方ねぇな、オレ様も残ってやるよ」
「ワシも力を貸してやろう」
「ええっ全員まじイラネ」
「てめぇは目上を敬う心をどこに置いてきたんだろうな」
おっとウッカリ本音が。まあ仕方ない。
「……シー」
「後で行くからさ、先に挨拶とかすませといてよ、アルヴィス」
「あいさ、……全く、お前は」
一瞬、言葉に詰まったアルヴィスがこくり、頷く。
「頼んだ、4人とも!」
叫ぶギンタとドロシー、エドワードとアルヴィスを見送って、俺達はクルリ、向き直った。
「……さあて」
残った理由はただひとつだ。
トランプ集団のその後ろ、控える黒丸アイメイクの男(名前は忘れた)。
借りはキチンと返さないと、な?
「……スー」
囁く。俺の背後で、渦巻く気配。
同時に、俺は腰のチェーンを発動させた。
「……ガーディアン使った上にそのバカ強力なウェポン発動させんのかよ」
やや後ろから呆れたような声が聞こえたけれど、それにはとりあえず無視を決め込む。
ゆっくり、鈍色に光る刃を横にかざし――俺は、微笑んだ。
「――クレイモア。変化せよ」