君は泡に死にゆくの | ナノ

おねがいだから此処にいて

「お願いだから、ここにいてよ」




恭弥がそう言った。
あの、雲雀恭弥が、
お願いだから、なんて。


「…恭弥」
「やっぱり嫌だ。無理なんだ、君がいなくなるなんて」


シーツの上に投げ出されていたユイの手首を握りしめ、雲雀は淡々とそう告げる。
いっそ泣き叫んでくれればいいのに、
なんてユイは考えて、
でもそんな恭弥見たくないなあ、となぜか自分が泣きたくなった。


「……ごめんね」
「どうしてあの時、僕をかばったの」
「…ごめん」
「なんでよけなかったの」
「…ごめん、ね」
「綱吉が言ってたよ」


突然雲雀の口から転がり落ちた名前に、
ユイは目をひらく。



「ユイは、いつ保健室から教室に戻ってくるの、って」




外では、もう涼風が吹かなくなっていた。
じりじりと照り付ける太陽の光に、
音もなく黄色い花が、保健室の窓の下で、
ただ、ゆらゆらと、ゆらゆらと。




「……ごめんね」



ごめんね、恭弥。


でも、もう夏は来てしまったんだ。







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