君は泡に死にゆくの | ナノ

まっくらな夜が明ける前に

青白い月光に照らされて、
でも彼はもっと青白い顔をしていた。


「…恭弥」
「なに」
「すきだよ」


月光にうっすら照らされた、
ユイは目を細め笑う。


「…最近、よく言うね」
「そう?」


恭弥が言ってくれないからね、
と、彼はちょっとすねぎみに口をすぼめた。
でもすぐにはにかんだように笑うから、
それが本心じゃないってわかってしまう。




「…すきだよ」




白い腕を引きよせる。
濃紺の影を落とすシーツのしわの上、
細身の彼の体は雲雀の胸にすっぽりおさまって。


「……ふいうち、とか」


かぼそい、震える声にふと目を落とせば、
顔を赤らめてあらぬ方向を見やるユイ。
思わず、口元がゆるんだ。


「…恭弥って、絶対、たらし」
「何馬鹿なこと言ってるの」
「あーあ、俺って苦労者」
「なに、嫉妬してくれるの」
「…もう」


ますます頬を赤くして、
彼はこちらの胸に、頭をさらに押しつける。


穏やかな月光が、僅かに開いた窓の隙間から射し込んでいた。
ひんやりとした風は気まぐれに吹き、凪いでいく。



夏は、
すぐそこまで来ていた。





「…恭弥」
「なに」






「……だいて」


|5/11|bkm

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