君は泡に死にゆくの | ナノ

あわになる予感

『きょうや』
『…なに』




なんで一緒にいるようになったのかは、
もう忘れてしまった。





「ツナ達がね、これ俺にって」
「……ふうん」
「元気になって、教室で皆と授業受けられるといいね、って」


ユイは保健室の窓辺で目を閉じる。
雲雀は腕を組み外壁に背中を付けたまま、
首だけひねり、色の白い彼を仰ぐ。


「……何、それ」
「ヒバードのぬいぐるみ」


嬉しそうに小さく笑う彼の、
その手に握られているのは随分と不恰好な。


「俺がヒバード大好きだから、って。ツナが布買って、山本が綿詰めて、獄寺が縫ったんだって」


獄寺って案外器用なんだな、
と大事そうにぬいぐるみを抱きしめる彼の姿に、

一瞬、呼吸が止まる。


嫌。
いやいやいや。


泡をぶくぶくと立てて蒼い海に沈んでいく、
投げ出された白い両腕。


垣間見える光景はあり得るものではない筈なのに、
息がつまる。



「……ユイ」
「ん、なに?」
「…今度は、僕があげるよ」
「え、ヒバード?」


やった、と声を抑えて笑う彼の、
その肩からずり落ちる白いシャツ。


「…また痩せた?」
「肩、てか上半身ばっか痩せてく」


このままいったらアンバランスすぎる、なんておどけるユイの顔に、白い日光がゆらりと落ちる。



空の青が、濃くなってきていた。
もうすぐ、蝉も鳴き出すだろう。




「……夏が、来るね」


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