断罪なんて要らない | ナノ
この感情も死への布石となるのなら


だから嫌だったんだ、
この男に攫われる、のは。


「…はっ、は…っ……!」
「…何、休んでんの、」
俺まだイってないんだけど、
途切れがちにそう言って、目の前の男は挙動をいっそう激しくする。
「っ、まっ、」
「待てない」
「あうっ、」
漏れた声は笑えるほどに屈辱的で、堪える暇も無く次の快感と虚無感がやって来た。
「っ、」
男は腰を抜き、ひとつ息を吐く。
「…ベル、」
これの、何が楽しい?
そう言いかけた言葉をルキアは飲み込む。
多分聞かされたって、
自分には少しもわかりはしないだろうから。
「ルキア、体力落ちた?」
こちらの呼び掛けはみじんも聞いていなかったらしく、しししっ、と耳に障る笑い声をあげ、相手はベッドの上で体勢を変えた。
正確にはルキアの上で。
ぎしり、負担にベッドがたわむ。
「…マジ?」
「そこで嬉しそーにするお前ってホント訳わかんねー」
こちらの唇を人さし指でなぞり、ベルは呆れたようにため息を付く。
こんな時でも目元は髪に隠れたまま、
わずかな表情も滲ませない。
「今から日本行くんだっけ?あれ?」
「…そーだよ。どっかのだれかさんに邪魔されなければもう着いてる予定だった」
「どっかの誰かさんってひどいなー、カワイソーなルキア」
「Fuck you」
向こうでキャッバローネの連中があたふたしてるに決まってる、と毒付いたルキアに、
「しょーがねぇじゃん。だって俺、王子だし」
意味不明な言葉を吐いて、再び笑う金の男。
「じゃー、第2ラウンドと行きますか」
「…は?ちょっ、おまふざけんな」
ぎしり、と再び自分の上に覆い被さるベルに、ルキアは慌てて身体を起こした。
「マジふざけんな、日本行く前に俺を動けなくさせる気か」
「いーじゃん、どうせすぐ回復するし」
「しねーよ、しかも今回相手が相手なんだよ」
「へー、誰」
「ヒバリキョーヤ」
「……ああ、エース君?」
「えーす?」
きょとん、と聞き返したルキアの顔が少し可愛いかったというのは、誰も知らないベルの心中。
「なんでも。で、野暮ったいピロートークはここまでにしない?」
「マジやめろ馬鹿王子」
「あっれ、そんな事言っていいの?壊してあげようと思ったのに」

死にそうなぐらいには。

ひそり、耳元で囁けば。
ぴくり、と少年は面白いほどに反応した。

…相変わらず。
ベルは密かに笑う。
死にたがり。

そして相変わらずなのは自分もだ。
嘲笑。
胸の奥でわだかまる、
雲の守護者への嫉妬と羨望。
キャッバローネのボスに止まらず、
ルキアがただ会いに行くという相手にまで。



「…責任取れよ、ベル」
「ヤダよ」
俺、王子だよ?
手首を押さえつけ、ししっと笑えば。
生に意味を見出せないのに死ねない愚かな眼前の少年は。
うっすら、笑った。

「…ベル、」
「何」
「…俺、けっこうお前の事嫌いじゃない」
「へー」
「少なくとも、跳ね馬よりは」
「…それはケッコー嬉しーかも」


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