断罪なんて要らない | ナノ
階下、遠いアタラクシア


「よールキア!どうだったよキョーヤは!」
「良い意味で予想の斜め上」


イタリア、豪邸、黒服の男たち。
ここは跳ね馬、ディーノの家、
そしてキャッバローネのアジト。
その一角に居座る銀髪の少年は、大して興味もなさそうにそう答えた。
「やっぱなー!キョーヤはいっつも俺の予想を上回るからなー」
相変わらずニコニコとした顔のディーノ。
人の部屋をノックもせずに入り込んできてまくし立てて、と呆れて肩をすくめようとしたところで気が付いた、そういえばここは俺の部屋じゃない。ディーノの家の、ディーノの部屋だ。
「めちゃくちゃ戦闘狂だった。あの年でアレって行く末が怖い」
「んなこと言ったらお前もだろー。そいえばルキアって何歳なんだ」
「さあ?」
片方の口元だけつり上げ、うっすらと笑うルキア。
そんな彼に苦笑し、ディーノは話を元に戻した。
「で、キョーヤの面倒は見たくなったか?」
「……んー」
ベッドの上、ころんと転がった少年は無感情な声をあげ、器用に肩をすくめた。
「…まー、飽きるまでなら」
「よっしゃ!そんじゃ頼むぜ」
「日本行きの手続きはそっち持ちなんだろ」
「とーぜん!」
ドン、と胸を張るディーノに、ルキアは笑みを浮かべながらため息をついた。
「じゃーよろしくな!あっ、なんかあったら俺のケータイにすぐ入れろよー」
「忙しいのに気づくのかあんた」
「ルキアならすぐわかるぜ!」
「嘘つけ…」

じゃーな!と手を振り出て行く金髪が、ドアの向こうへ消える。
見計らったかのようにベッドから起き上がり、ルキアは無駄に大きい窓から外を眺めた。

3階から見える庭はやけに広く遠くて。
けっこうな高さの下、群れて咲いている名も知らない花が、馬鹿にするように揺れていた。

「……こっから、落ちたら」

即死、は無理だろう。
運が良くてもせいぜい骨折。
自分の馬鹿みたいに高い反射神経じゃあ。

「…残念」

日本行きの飛行機、墜落しないかな。
そこまで思ったところで、その考えがなんて不謹慎な物なのだろうと気づいた。

「……どーせ」

行き着く先は1つだけ。
どんな聖人も悪人も、
そして、自分も。
ただ早いか遅いかの違いだけで、
それを自分はいつまでも待ち侘び、怖れている。


「ヒバリキョーヤ、か」


あの戦闘マニアと遊ぶ事は、
このどうしようもない望みを叶える一歩となるのだろうか。







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