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第八話「二人きり〜エンマ社長〜」

私が仕事をするコールセンターは

会社のビルの三階にある。

今日は遅番だった私がお昼前に出社して

エレベーターに乗ろうとすると

「お!今からか?」

エンマ社長とエレベーターの前で一緒になった。

「はい!今日も頑張ります!」

「はは!その意気だ」

私達が微笑みあっていると

エレベーターが到着したから二人で乗った。

その笑顔を見て

さらに頑張ろうと思いながらエレベーターに乗っていた。

当り前のように三階にすぐに着くと思っていた。

でも

ガクン!

大きな音と揺れが起きて

今までのエレベーターが動く気配がなくなった。

「え?」

「なんだ?!」

当然私達は慌てる。

「もしかして…

エレベーターが止まったのですか?」

階数を知らせるランプが全く動いてないから

私はそう思った。

「どうやらそうらしい。

閉じ込められちまったみたいだな」

こんな時にエンマ社長は冷静だ。

「そんな…」

「大丈夫だ、未来。

少し待ってろ」

エンマ社長は緊急ボタンを押し

外部と連絡を取ってくれた。

『はい?どうされました?』

すぐに男性の声が聞こえてきて

「エレベーターが動かないんだ」

エンマ社長は淡々と話し始めた。

そして男性が言うには復旧には一時間は

かかるようだった。

「できるだけ早く来てくれるみたいだったがな…」

「一時間…」

私は途方に暮れた。

「ぬらりにも連絡がいくはずだから

心配いらねーよ」

でもこんな時なのにエンマ社長は笑った。

それが救いだった。

「それより暑くないか?」

「確かに…」

空調の効いていない密室なので

エレベーターの中はムシムシとしていた。

「暑いな…」

そしてエンマ社長は

おもむろにスーツの上着を脱いだ。

その仕草はなんだかとても男らしくて

ワイシャツから少し

たくましい二の腕が見えて私はドキドキした。

私はエンマ社長を直視できない。

「ん?どうした?」

「な、なんでもないです」

するとエンマ社長は

私の頭をぽんぽんと軽くたたいた。

安心させるように。

「俺ですまないな。

ぬらりとか、もっといい男なら

退屈しないだろが…」

「いえ、エンマ社長はかっこいいです!」

思わず私はそう言ってしまった。

「え?」

「あ…!」

そして自分が言った大胆な言葉に

気が付いて慌てた。

「あ…ありがとな」

エンマ社長も照れてるみたい。

ちょっと気まずい雰囲気が

少しの間だけ流れた。

でもそれから助かるまで約一時間。

エンマ社長とたくさん話せた。

社長じゃなくて友達みたいに

楽しくて全然怖くなかった。

「大丈夫か、富田さん」

無事に三階にエレベーターが到着したら

ぬらりひょん部長が真っ先に心配してくれた。

「おい、ぬらり…俺の心配はしないのか?」

エンマ社長はそう言ったけれど

顔は笑っていた。


to be continued

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