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第五話「エンマ社長」

仕事が終わって帰り道。

夕日に照らされながら私は一人歩いていた。

今日も疲れたけど充実していた。

「ねえ、今日エンマ社長が

私に笑ってくれたの!」

「えー!いいな〜!

やっぱりエンマ社長の笑顔って

最高だよね!」

すると後ろからそんな会話が聞こえた。

聞いたことない声だったけれど

間違いなく同じ会社の人だろう。

やっぱりエンマ社長って人気なんだな。

私もエンマ社長がの笑顔に何度も救われている。


「あれ?未来じゃないか!」

駅の改札を通ろうとした時

また背後から声が聞こえた。

それは…

「エンマ社長!」

今日も赤いネクタイに白いワイシャツを着た

エンマ社長だった。

紺色の上着は暑いのか脱いでいて

右手で持っていた。

「今帰りか?」

「はい!

エンマ社長はどちらに?」

改札前では邪魔なので

一歩ずれて私達はそう話した。

「これから仕事で大手町まで行くんだ」

「そうですか。お疲れ様です!」

「ああ!」

エンマ社長はニッと歯を見せて目をつぶって笑った。

上司にこんなこと思うのはよくないかもしれないけれど

確かに本当にかっこいいかも。

こっそり私はそう思った。


私達は途中まで一緒の電車に乗った。

車内は混んでいてドアの近くに二人で立つ。

「仕事には慣れたか?」

「はい!今はまだ研修中ですが

だいたい分かってきました!」

私はできるだけ明るく本当のことを言った。

「そりゃよかった」

もう一度エンマ社長は笑う。

「安心したよ。一応女が多い職場だしさ」

「え?」

エンマ社長の声はどこまでも優しかった。

「ほら!

よくわかんねーけど

女同士ってギスギスすることもある

って聞いたし…少し心配だったんだ。

うちなら大丈夫って信じてるが…」

ガタンゴトンと電車の音と

エンマ社長の声が車内に響いた。

「大丈夫ですよ。

それにみんなもエンマ社長のこと

信頼していると思います」

それは常日頃私が思っていることだった。

まだ入社して間もないが

社員も派遣社員もみんなエンマ社長を信頼しているのは

伝わってくる。

「ありがとな」

エンマ社長はそう言ってからふと外を見た。

夕日がエンマ社長の小麦粉色をした顔を照らしている。

「俺は一人でも多くの子供が笑う

オモチャを世に送り出したいんだ」

「エンマ社長…」

エンマ社長の横顔は

とてもきれいだった。

エンマ社長の理想の手伝いを私もしたい

そう心から思った。


to be continued

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