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第三話「励まし」

ぬらりひょん部長は

まず私に社内を案内してくれた。

ふわりと長い銀髪をなびかせて

ぬらりひょん部長が歩いて

私はその後をついていく。

「休憩所はここだな。

マッサージチェアもあるぞ?」

そんな感じでオフィスや休憩所

トイレの場所まで丁寧に教えてくれる。

そしてデスクに座って資料を使いながら

ここの会社アークについて説明もしてくれた。

アークはオモチャの通信販売の会社で

私がやるのは

お客様窓口のオペレーター…苦情とかくるのかな?

ぬらりひょん部長の心地よい声のせいか

内容以上にわかりやすい気がした。

「…以上だ」

「ありがとうございました」

私は軽く頭をさげる。

「不安か?」

「え?」

ぬらりひょん部長を見ると

優しく微笑んでくれた。

その顔はとても美しい。

「大丈夫だ、心配はいらない。

私も社長もいる」

「は、はい!」

私は嬉しくて何度もうなずいてしまった。

最初は冷たい印象だったぬらりひょん部長だけど

優しい人なんだなって思えた。


「彼女が菅野さん。

女性オペレーターのリーダーだ」

「よろしくね、富田さん!」

そしてぬらりひょん部長が

紹介してくれたのは綺麗な女性だった。

茶髪のショートヘアがよく似合う

すらりとズボンを着こなす長身の菅野さん。

きっと仕事もできるんだろうな。

「富田です。

今日から頑張ります!」

私はそう元気よく言ったのだけど

「…お、お疲れ様でした」

定時にはふらふらになっていた。

うう…

あんなに覚えることが多いとは…。

そう思いながら

帰宅するために廊下を歩いていると

「未来」

後ろから呼ばれた。

振り向くとエンマ社長だった。

嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる。

「ん?疲れてるみたいだな」

エンマ社長は私を見てちょっと顔をしかめた。

どうやら疲れが顔に出てしまったようだ。

「そ、そんなことないです!」

だから私は慌てて首を横に振った。

本当はクタクタだけど心配かけたくなかったのだ。

「そっか。大丈夫だ。

俺もぬらりもいるからな!」

「え?」

さっきのぬらりひょん部長と同じ言葉に

私は驚いたけれど

「ありがとうございます!」

できるだけ元気に言った。

「うん!じゃあな。ゆっくり休めよ」

そう言ってエンマ社長は

オフィスへと戻っていった。

エンマ社長とぬらりひょん部長。

心強い味方がいてくれるから

私は頑張れる気がした。

なぜだろう?

この前初めて会ったのに

すっかり私はぬらりひょん部長も

エンマ社長も信頼していた。


to be continued

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