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第十話「聞いちゃった」

ハルヤが転校して一か月が経った。

「ねえねえ、酒呑くん!」

ハルヤは友達はいないが

女子にモテた。

その日もいつも通りに

女子に囲まれながら

廊下を歩いていた。

「酒呑くんは

好きな女性のタイプとかないの?」

「好きな女性ねえ…」

ハルヤは少し考えて

「お姫様みたいな子かな?」

と答えた。

そしてその直後

未来とすれ違った。

「やあ!未来先生!」

ハルヤは手を挙げて挨拶して

「今日もモテモテね、酒呑くん」

未来も笑った。

「えー。

酒呑くんって

未来先生には優しいよね?」

「え?」

「そう言えば…」

未来とハルヤが隣に住んでいるのは

内緒だったので

ハルヤは内心焦って

「別にそんなことないよ。

だいたいあんな人

好みじゃないし」

と言ってしまった。


夕方。

マンションのエレベーターで

ハルヤと未来は一緒になった。

「お疲れ様、先生」

ハルヤはいつものように笑ったが

「…」

未来は何も答えなかった。

「おい、無視?」

「さっき聞こえてたわよ。

どうでもいいなら話しかけないで」

未来はそう言うと

ちょうど扉が開いたエレベーターから降りて

自分の部屋に入った。

「なんだよ。

別に本音じゃないんだしさ。

…ん?」

ハルヤは自分の言葉に違和感があった。

あのセリフが本音ではないなら

未来に恋をしていることになる。

「まさか…姫じゃないのに」

ハルヤはそう独り言を言った。

その頃未来は

「なんでこんなに腹が立つんだろう?

私…ハルヤくんのこと

好きなのかな?」

同じように気持ちに気がついていた。


to be continued

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