第四話「妖怪ウォッチ」


(ん?)

未来は目を覚ました。

見慣れないカーテンが目にはいる。

(そうか!私、昨日妖怪の世界に呼ばれたんだっけ…)

窓から鳥のさえずりが聞こえ、朝だと分かった。


(今何時だろう?)

未来は時計を探した。

すぐに見付かったが、それは未来を驚かせた。

「ええ!?なにこれ?」

時計の針は人間界と同じだったが

数字ではなく漢字で書かれていたのだ。

「丑の刻とかある…

 そういえば妖怪の世界って

 やっぱり夜がにぎやかなのかな?」

未来は妖怪のおどろおどろした雰囲気を想像したが

すぐにそれをやめた。

「やめておこう。

 昨日会ったエンマ大王、ぬらり、犬まろと猫きよも

 みんな仲良くできそうだもん」


気を取り直して未来は

部屋の隅にあった洗面台で顔を洗った。

それから着替えが入っていると言われたタンスを開けた。

「わあ!」

引き出しの中には

かわいらしい柄の和服が何着か入っていた。

「かわいいけど、自分で着れるかな?」

和服なんてほとんど着ないため未来は戸惑った。

「それに、こんな特別扱いされていいのかな?」

疑問に思ったが、とりあえず服を着てみることにした。


(よし!これでいい)

鏡を見て未来はようやく服をきちんと着れた。

長い髪もアップにまとめてみた。

(それにしてもかわいい柄だな)

未来は心を踊らせた。

そんなとき…

コンコンコン

ノックの音が部屋に響いた。

「はーい!」

未来は扉に近づいた。

「ぬらりひょんです。

 未来様、お目覚めですか?」

「うん、今開けるね」

そう言って重い扉を開けた。

自分も霊力で開けられればいいな、など思いながら。

「っ!?」

未来を見てぬらりは息を飲んだ。

「え?」

ぬらりは目をそらす。

「どうかしたの?」

服の着方が間違っていたのだろうか?

と少し不安になった。

「いえ、その…よく、お似合いで」

やはり目をそらしながら、ぬらりは言った。

「本当?!よかった!」

未来は喜んだと同時に安心した。

「ええ、それよりお着替えになるなら侍女を呼んだ方が…」

「そんな、着替えなんて自分でできるよ」

手をパタパタさせながら未来は急いで言った。

和服に少し戸惑ったとは言えなかった。

「それより、なにかあったの?

 中に入ったら?」

「いえ、ここで大丈夫です。

 お渡したいものがあります」

ぬらりは右手を差しだした。

そこには赤い少し大きめの腕時計らしきものがあった。

「これは?」

「妖怪ウォッチ

 妖怪と人間が通いあうのに必要なものです。

 貴女様はこれがなくても

 妖怪が見える稀有なお方ですが…」

未来は妖怪ウォッチを見ながら

ぬらりの説明を聞いていた。

「そういえば昨日もそんなことを言ってたね」

「ええ…ですが妖怪ウォッチは

 ただ妖怪を見えるようにするだけではないのです。

 妖怪ウォッチと、これを貴女に」

そう言ってぬらりは妖怪ウォッチと丸いものを二つ渡した。

よく見れば丸いものには

「エンマ大王」



「ぬらりひょん」

と書いてあった。

「え、もらっていいの?

 それに、これは?」

「こちらは妖怪メダルです。

 これがあれば私たち妖怪を

 いつでも呼び出すことができます」

「へー、すごい!」

未来は妖怪ウォッチとメダルを交互に見た。

「なにかあったら遠慮なく呼び出してください。

 大王様は忙がしくて召喚できないときもありますが

 メダルを未来様に持っていてほしい

 と仰られていました」

「ありがとう、心強いよ」

未来は妖怪メダルを抱くように持った。

それだけで、ぬらりとエンマ大王が

近くにいてくれるような気がした。

「妖怪メダルは妖怪と友達契約をするともらえます。

 多くの妖怪と友達になられると楽しいかもしれません」

「そうなんだ。

 これ、つけてみてもいい?」

「もちろんです」

ぬらりは笑顔で頷き

未来は左手に妖怪ウォッチをつけてみた。

「通常最新の妖怪ウォッチは水色ですが

 これは、大王様が自らデザインを考えたのです」

「それでベルトに王って書いてあるのね」

未来は納得してつけた妖怪ウォッチを見た。

「それでは私は公務がありますので、これで。

 あとで犬まろ猫きよが来ますので

 部屋でお待ちください」

「うん、わかった。

 お仕事、頑張ってね」

「ありがとうございます」

ぬらりは微笑んで去ったが、未来はなんだか寂しく感じた。

なんだかぬらりともっと話をしたかった。

(そんなこと言ったらぬらりを困らせちゃうよね)

気のせいだろうと思い

未来はもらったばかりの妖怪ウォッチとメダルを見つめた。


to be continue







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