不器用(ぬらりひょん)


私は包みを持ってエンマ宮殿にやって来た。

恋人のぬらりが徹夜で仕事をしているから

手作りお菓子の差し入れだ。

早くぬらりに会いたくて

つい早足になってしまう。


「ぬらり!エンマ様!」

私は二人がいるだろう執務室のドアを開けた。

「未来!」

「どうしたのだ?」

事前に会いに行くことを伝えてなかったから

二人は少し驚いていた。

それにやっぱり疲れているようだった。

「二人が頑張っているから差し入れだよ」

そう言って私は包みを開けた。

ふわりと包みがとれて

黄金色のチーズケーキが姿を現す。

「すげえうまそう!」

「君が作ったのか、未来?」

エンマ様は嬉しそうに言って

ぬらりは不思議そうに聞いた。

「そうだよ!」

「あーあ!

ぬらりはいいなぁ…こんな器用な彼女がいて」

エンマ様が心底うらやましそうに言うから

「え?」

「あ…」

私もぬらりも顔が赤くなった。

「やっぱりお礼に

抱きしめた方がいいんじゃないか?」

ニヤニヤしながらからかい続けるエンマ様。

「そ、そのようなことは…できません。

お茶をいれてきます」

ぬらりはそう言って執務室を出て行ってしまった。

「ぬらり…」

私はぬらりが出て行った扉を見て

ちょっと寂しい気持ちになった。


「じゃあ、ぬらり。

送ってくれてありがとう」

「あ…ああ」

エンマ宮殿の玄関で

私はうんがい鏡を召喚しようとした。

「未来、ちょっと待ってくれ」

でも妖怪メダルを持った私を

ぬらりはいきなり抱きしめた。

「ぬらり?!」

私はぬらりの腕の中で

突然の抱擁にただ驚いた。

「私は…二人きりの時でしか

このような甘いことは出来ない。

本当はもっと先程君を褒めるべきだった」

「ぬらり…」

「不器用かもしれないな。

でも未来

私は君を愛している」

私はぬらりの言葉に胸がいっぱいになった。

そして私達はどちらともなくキスをした。







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