俺と幸せになれ(エンマ大王)


今日は私の結婚式。

天気は雲一つない晴天。

真っ白なドレスを着て

綺麗に化粧をしてもらって…。

人生で一番幸せなはずの結婚式なのに

私の心は空のように晴れなかった。

(エンマ大王…)

控え室で私はある妖怪の名前を

心の中でささやいた。

私が密かに恋焦がれているエンマ大王。

いつも誰にでも優しいエンマ大王に

私はいつの間にか惹かれていた。

でも今日結婚式を挙げる人は違う人。

このままでいいのだろうか?

そう自分に問いかけても返事はない。


チャペルの入り口。

正装をしたお父さんが待っていた。

このドアが開けばもう後戻りはできないだろう。

そう思っていたらそのドアが開いた。

一歩一歩

バージンロードを私とお父さんが歩いている時だった。

「待てよ!」

男性の声がチャペルに響いて

オルガンの音も止まった。

信じられないことにその声はエンマ大王だった。

「エンマ大王…」

いつものエンマ大王の赤い服が

とてもまぶしく感じた。

「未来!

お前の新郎は俺だ」

自信たっぷりにエンマ大王はそう言って

右手を私に差しだした。

来いという意味だろう。

それを見て私は迷いなくエンマ大王へ

駆け寄った。

チャペルの中にいる人達がざわざわ言い始めた。

「待て…!」

タキシードを着た新郎が追いかけてきたけれど

エンマ大王は私を抱き上げて

妖術でワープをした。


ワープをした先は

チャペルの近くにある大木の枝の上だった。

私とエンマ大王はチャペルの様子を

じっと見ていた。

とんでもないことをしてしまったと

ドキドキしたけれど後悔はしていない。

「大騒ぎだな」

ニヤニヤしながらエンマ大王は

チャペルから出てきた人を見ている。

「そりゃ…」

「まあ、今更引き返せないけれどいいんだな?」

そう言ってエンマ大王は私の顎に手を添えた。

「はい、私でいいのなら…」

「お前は俺と幸せになれ」

低い声でエンマ大王は言って

私達の唇が重なった。

この人を信じてみようと

キスをしながら私は思った。







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