22.躊躇う(シカナル)
※シカマルが木の葉の者ではありません。ナルトは木の葉の忍びで九尾はいません。
俺は迷った
躊躇った
目の前にした木の葉の忍びを殺るのに
何故かは簡単だ
そいつはまるで光そのものに見えたから
「……ん…」
身じろぎをする気配に俺はそちらに目を向けた
「起きたか?」
ぼんやりとしたまま周りを見渡していたそいつは俺の声に身を固くした
「お、お前は…!」
「今日からお前は俺のだ」
「なっ!?それどういうことだってばよ!」
「俺に負けたんだ。お前をどうしようと俺の勝手だろ?」
「っ!」
キュッと唇を噛み締めるそいつの瞳は絶望からか一瞬揺らいだが直ぐに灯がともった様な強い決意を持った瞳が俺を真っ直ぐに射抜いた
「利用されるぐらいなら自分で命を絶つ」
「……できんのかよ?」
「できる」
言い切ったそいつは嘘を付いていない様に見えた
「くくっ…おもしれぇ」
「なっ…!何で笑ってるんだってば!」
今まで真剣に話していたのが馬鹿らしくなるような会話にナルトは怒りから顔を赤らめた
「見込み通りだな」
「見込み…?」
「あぁ。俺を楽しませる見込みだ」
そんな見込みで自分が生かされていると思うと戸惑いを覚えた
他の里の忍びを殺さないって事は里を裏切るも同じ事の筈なのに、目の前の男はさも楽しそうに笑っているのだ
「お前ってば…死にたいのか?」
「何でそう思う?」
「何となく死に急いでいるように見えるってばよ」
興味を持ってはいけない、相手は敵だ
けど
「そうか…そう見えるか」
そう淋しげに瞳が揺らいだのに心が何故か締め付けられた
相手は敵だと自分に何回も言い聞かせるも何故か憎めなくなる一方日にちは刻々と過ぎていく
やることがないナルトは部屋を掃除したり洗濯物を洗ったり、干したり
普通主婦が行うであろう事を行っていた
てっきり幽閉生活かと思いきやこの屋敷内だったら勝手にすれば良いとの奈良シカマルの言葉により何故か今の状態になってしまっていた
「ナルト」
「ん?何だってばよ」
「膝貸せ」
「あー、はいはい」
平和に流れるこの空気に数日前の自分が馬鹿らしく思えてくる
そして今、この状態がとても幸せだと思う自分に戸惑いながら敵だったシカマルを受け入れ膝を貸す自分自身に呆れながら無防備に寝ようとするシカマルに殺すのを何度躊躇ったか知れない
「俺なんかに気を許したらいけないってばよ」
そう良いながらもこの人の元を去ることが出来ないのは力が足りないわけでもない
ただ、放れたくないと思ってしまったからこのぬくもりを手放すことができないのだ
-END-
暗い癖に甘いなぁーと見返して思ったり
2013.12.3 完成
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