僕はただ嘘を吐く(臨→覚醒帝人←青葉)


六話のネタバレがあります。
嫌いな方は今すぐ逃げて下さい。





【僕はただ嘘を吐く】



園原さんを巻き込んだ事が許せなかった。
だから“私”は青葉君の手の甲にボールペンを躊躇なんてしず、ただ冷静に振り下ろした。
丁度骨が無い部分だったため掌まで達していたが、私はただ言葉を発した。

「これは最初の命令だ。私の怒りを受け入れろ。」

白紙の紙が赤く染まるのを見ながら激痛を耐える様に俯く青葉君を見下ろす、帝人の口元には笑みが浮かんでいた。
そんな事を青葉君は知る事は無く、激痛に耐えながら言葉を発する。

「…いいでしょう。こいつが…この、僕の血に濡れた紙が契約書だ」

その言葉に私は素っ気なくそうと言い、青葉君が顔をゆっくり上げるのが分かり、“私”は“僕”に、普段学校にいる時と全く変わらぬだろう笑顔を向けた。
その笑顔を見た青葉君は固まった。その時、パチパチと何処からか拍手が聞こえ帝人はうんざりした顔をして拍手をしているだろう人物の名を呼んだ。

「盗み見とは悪趣味ですよ。折原臨也さん?」
「だってさぁ、帝人君の覚醒をこの目で見たくてさ。帝人君、僕の予想を楽に越えて来るから嬉しくて拍手しちゃたんだよ。」

姿を現した臨也さんはアハハと嬉しそうに笑い、僕の前まで来ると肩に手を掛けて、後ろへと周り腕を回され抱きしめられる。
それに僕は抵抗はしず、青葉君の手を手早く治療して包帯を巻いて行く。

「折原臨也…」
「帝人君を覚醒させてくれた事感謝するよ黒沼青葉君。」
「うっとしいので離れて下さい。」

睨み合う二人の間に挟まれている帝人は青葉君の手に包帯を巻き終えると臨也さんを横目で見て吐き捨てる様に言えば酷いなぁとさして傷ついていない顔で言う。

「帝人先輩、ありがとうございます。」
「うんん、痛むよね?ごめんね。」
「い、いえ、契約の証しだと思えばこれくらいの痛みどうって事無いですよ。」

治療のお礼を言った青葉君に僕は悲しい顔をして包帯の上から手の甲にキスを落とせば青葉君は顔をほのかに赤らめ、臨也さんから不機嫌なオーラが染み出ていてきっと眉を寄せて嫉妬にも似た顔をしているのだろう。
そう思えば帝人は自然と笑みを浮かべていた。
臨也さんは僕に恋愛感情を抱いている。だから好きだとか愛してると何度も、何度も繰り返す。

「帝人君。」
「帝人先輩。」

二人の声が重なり僕の耳に届き、この人もかと何となく分かった。
あぁ、青葉君もか…そんな事を思いながら利用しがいのある人達だと心の中でこれでもかと言うほど笑う。

「なんですか?」

あぁ、気持ち悪い。
同性から向けられるこの好きだと訴えて来る瞳、そして、 愛の言葉…

「愛してる」
「好きです」

さっきと同様重なる言葉。
なんでこんなに息がぴったりなのだろう?
この二人実は中が良いんじゃないだろうか?
そんな本人達が聞いたら激怒しそうな事を思いながら

吐き気に耐え、僕は利用する為に、離れて行かない様に嘘の言葉をにこやかに告げる。

「僕も好きですよ。」

同性愛なんて僕には一生分からない。

分かる日が来るとすれば僕が完全に我を失い、“私”へと変化を遂げた時だろう。

あぁ、早く終わらせよう。

そして、“僕”は日常へと戻り、二人の…みんなの元から消えてしまおう。

でも、もし…“僕”に戻れないと言うなら

二人には責任を取って貰おう。

“私”に一生尽くして、尽くして…死んで貰おう。


吐き気は今は吹き飛んで、“僕”は二人の頬にキスをして、唐突な事に何が起きたのか分からない二人はポカーンと口を開けて呆然と立ち尽くしている。

そんな二人の間から抜け出した帝人は楽しみを隠しきれない様に口元を緩め、二人に手を振る。

「では、“また”。」

僕は二人の言葉を発するよりも早く踵を返しその場を去った。

好き。

使える人は

好き、好き、大好き。

甘い人は

好き、大好き、愛してる。

馬鹿で優秀な二人の駒





-END-

ついにやってしまった!火種サンド何か今日パッと思い付いて書いてたらいつの間にか出来ちゃった(笑)
自分で書いたのに帝人が怖っ!って思ってしまった;
でも覚醒した帝人は怖くなきゃ意味ないよね♪

2010.8.9 完成
2010.10.14 移動



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