決して手を離さない
サスケに狙われる様になったのはサスケが抜け忍になってしばらくしてからだった
「ナルト、お前が欲しい」
そう言われた時にはどうしたら良いか分からず戸惑っている間に手の甲にキスを落とされていた
「っ!」
「ナルト」
いやっと首を振るナルトにサスケは手を引き強く抱き締め逃がさないと耳元で呟いた
「放せってばっ!俺にはシカマルがいるってば」
胸元を叩き放して貰おうとするナルトにサスケは辛そうに顔を歪め無理矢理ナルトの唇を奪った
一瞬抵抗が緩んだのを見越した様な行動にナルトは顔を赤くしキッとサスケを睨みつけ
「こんなことしてもどうにもならないってばよ」
「あぁ、だからお前の居場所を潰してってやる。俺の元にしか来れないように」
最悪だと思った同期でライバルだった男が今は俺の居場所を本気で潰しにかかっていることが分かったから
「っ…諦め悪いってばよ」
「お前が欲しいんだから逃がすかよ。お前が来るまで潰し続けてやるよ」
それが10年前の始まりの出来事
「それから私は里を抜けました」
「何で里を抜けたんだ?」
「巻き込みたくない人がいたんです」
居場所はシカマルの元だったから巻き込んでなくしたくなかった
だから、シカマルに別れを告げた。もしかしたらそれがサスケの狙いだったのかもしれないと今なら思うことができる
でも、あの時は余裕なんてもの一切なくて、とにかく自分に関わる者を遠ざけることしか考えることしかできなかった
「巻き込みたくない奴が…」
「えぇ、巻き込みたくなかったんですよ」
10年間、誰に頼ることなく正体を明かさなかったのもただ、巻き込みたくない一心だった。ただ、それだけのこと
「もう…気づきましたか?」
本当は今日中に木の葉を去るつもりだった
それを変更したのはシカマルに居場所がここだと言ってもらえたことがナルトの心に響いたからなのだろう
10年前
木の葉
巻き込みたかったもの
それだけでシカマルだったらきっともう気がついてしまった
蒼火の正体を…
「…ナルトなのか?」
震えた声で紡がれたシカマルの声にナルトはゆっくりと頷いたその瞬間、シカマルはナルトを抱き締めた
強く、強く抱き締め
今度こそ決して離さないと言う様に無言でシカマルはナルトを抱き締め続けた
「シカマル、今度は巻き込んでいい…かな?」
泣きそうになりながらシカマルの背中に腕を恐る恐る回したナルトはトクントクンと鳴る心臓の音にホッと息を吐き口を開いた
断られないと分かっていても高鳴る心臓を誤魔化す様に顔を上げればコツンと額がシカマルの額と当たり額を引っ付けたまま目線が交わった
「当たり前だ超馬鹿。今度こそ俺を置いてくんじゃねぇよ」
「うん、置いてかないってば」
置いてったら今度こそ許さないと言ったシカマルにナルトは泣きそうな顔をしたまま笑顔を向けた
絶対もうこの手を放す事がないように
2014.1.13 完成
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