届かない声



イビキからの情報だと捕まったリーダーの忍びはただ一言「姫をあの方の元へ」と言っただけで後は何も話さなかったと言う


「姫って言うと舞姫…蒼火のことか?」

「そうなるかね」


姫と呼ばれる身分の者もいるが今、木の葉で姫と言えば舞姫が一番に話題に出るだが


「あんだけの人数でそれだけを伝える為だけに乗り込んで来たのか?」


わざわざ犠牲、生贄の様に死んでいった敵の忍び達がそのために使われたのならば相手は余程命を軽くみているか、ただの使い捨ての駒だと思っているのかとりあえずろくでもない奴には変わりないのだろう


「そう考えて正解だと思いますよ」

「ただの使い捨てとしか思ってねぇて言うのかよ」

「蒼火。その口振りだと知っていそうだね」


綱手の言葉に黒燈と綱手の視線は自然と蒼火へと向いていた


「そう思うのが普通ですよね。多分今回仕掛けて来たのはうちはサスケです」

「な!」

「何でサスケだと分かる?」


蒼火の言葉に驚きながらも問い詰める黒燈に蒼火は相変わらず冷静に返した


「うちはサスケは10年前から私を狙っていますから」


10年前のナルト失踪事件からずっと無理に捕まえようとしないでゆっくり、じっくり自分が必要になるのを待っている



「おいっ、蒼火お前狙われてるってどういう事だ」

「サスケは私を欲しているんです」


徐々に居場所を無くし追われていくのを楽しむかの様にまるで狩りをするかの様に


「今日はもう遅いですしこの話はまた致しましょう」


誤魔化す様に笑った蒼火の笑顔は固く、いつもの笑顔とは全く違っていた


「そうだね、とりあえず今日は解散としよう」

「綱手姫…ありがとうございます」


綱手の声によって話は終わり解散となったが蒼火は綱手に頭を下げお礼を言うとその場から瞬身を使い消えた

それを見送った二人は何で蒼火が消える瞬間あんな寂しそうな泣きそうな顔をしたのか理解する事が出来なかった





化け狐と罵られる事も思ってくれる人がいれば良かった

けれどある事件以降そんなこと言えなくなった


「久し振りだな」

「こんな場所まで何の用ですか?」


分かっているだろうと言うように笑うのは、うちはサスケ木の葉を切り捨て復讐の為に生きてきた存在


「何度来ても私の気持ちは変わりませんよ」

「相変わらずだな」


相変わらずで結構ですと冷たくあしらう蒼火にサスケは楽しそうに笑い蒼火の変化を無理に解いた


「解!」

「っ!サスケ!!」


サラリと揺れた十年前より伸びた金髪と決意の籠もった蒼い瞳は十年前行方不明になったうずまきナルトそのもの


「俺の前では偽るな」



髪を手取り口づけたサスケに蒼火は嫌そうにその手を叩きサスケとの距離を取った


「こっちに来いよ、ナルト」

「嫌だ」

「またすぐ里を移る事になる」

きっぱりと告げたナルトだったがサスケの言葉に瞳は揺らぎ唇を噛み締め痛みを堪えるように声を振り絞った


「っ…また、また居場所を潰すのか!」

「俺の元を居場所にすれば良い」


甘い囁きにナルトが揺らぐ筈もなくナルトは首を横に振りサスケを拒絶した


「ナルト、お前はいつか自分から俺の元へ来る。絶対にな」


そう言い残し消えたサスケにその場に崩れ落ちたナルトは涙を流さない様に唇を噛み締め拳を握り締めた

負けないとそう自分自身に言い聞かせる様に


「負けてたまるか」


震える身体を抑え立ち上がったナルトは今の状態で術を使うのは無理と判断し、綱手から借りている部屋ではなく、本宅へと足を向けた

死の森の奥深くナルトは結界に触れた瞬間目の前にミナト、父親が作った屋敷が現れた


「ただいま」


おかえりと言ってくれる人がいなくてもここは唯一のナルトの居場所


「みんな…もう疲れたよ」


縁側に横になったナルトは涙が漏れないように腕で目元を覆い今にも消えそうな声で言葉を紡いだ


「シカマルっ…助けて」


その声は誰に届くこともなく空へと消えた





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ギャグぽかったのから一気にシリアスになってきましたねー
まさかのサスケを出せたので満足ですよ!
サスケとナルトの状態は今は各自の想像にお任せしますw

2013.12.31 完成



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