不器用なんです
木の葉の火影、綱手姫の前に現れた二人は部屋の状態を見て溜め息を吐いた
「綱手姫…」
二人を待ち構えていた綱手は蒼火の声に書類に向けていた顔をガバッと上げて二人を歓迎と言う名の懇願した様な目で二人を見ていた
「良く来た二人共!」
「また、ですか?」
「また、だろうな」
綱手の歓迎の言葉と表情はサラッと無視した二人はまたあの書類の山と戦わないといけないのかと深い深い溜め息を吐いた
「すまないねぇ」
「そう思う心があるなら貯めないで下さい」
「つか、暗部の総隊長と舞姫捕まえて書類手伝いなんてさせるの貴方ぐらいですよ火影様」
黒燈の凄みにはははとから笑いする綱手に蒼火までも黒燈に同意するかのように口を挟まず手と目だけを動かしサインのいるものや、暗部に送るもの、ファイルにしまうもの、などにテキパキと仕分けと言う名の作業を行いながら期限の近い任務は影分身に向かわせるという手慣れた様にこなしていく
「慣れてるな」
「綱手様が火影になってからはいつも書類整理を手伝わされてましたから」
「失礼だね蒼火!いつもではなかったじゃないか」
慌てた様に綱手は訂正するものの蒼火の言葉の方が今は信用出来ると思ってしまっていた黒燈は毒されたのかと思いながら蒼火が更に訂正を入れるだろうと言葉を待った
「そうですね。ニ回に一回は書類整理でしたね」
「蒼火!」
「書類を貯める綱手姫が悪いんですよ?」
「うっ…」
蒼火の正論に確かにと頷きつつ何時もの他人に話す時の様に固い口調ではなく、笑みを見せ冗談を交えて話す蒼火にまたドクンと胸が高鳴った気がした
「黒燈?」
「いや、なんでもない。それよりさっさと休暇に戻らせて下さいよ火影様」
「そ、そうだった二人を呼んだのはもう一つ理由があってねぇ」
胡散臭そうに綱手を見る二人に綱手は真面目の話だよ!と二人に信じてもらうのに必死に訴えた
「……分かりました」
「それで話してのは?」
気を取り直す様に咳払いをした綱手は真剣な顔をしたため二人共顔を引き締め言葉を待った
「ナルトの行方が不明になってもう10年。やっと手掛かりを見つけてね」
「!本当ですか!?」
喜んだのは嬉しそうに笑う綱手と黒燈で、蒼火は深刻そうな顔を一瞬だけしたがすぐそうですかと他人ごとのように言葉を紡いだ
「蒼火はナルトと会ったことねぇんだっけ?」
「そうですね。私が出没し始めたのが10年前ですので丁度擦れ違いです」
そうだったなと懐かしむ様にナルトの話を始めた黒燈はとても無邪気で綱手も昔を懐かしむ様に話に参加した
そんな中、孤立するのはどこにも属すことがない蒼火ただ一人
「ナルトか…」
久しく聞かなかったその名前に蒼火は激しく胸を痛めた
その名をもう口に出来ない苦しさと仲間を前にしても冷静に対応しなければならない苦痛は計り知れない
けれどそうしなければならない理由がある生まれ持ったこの力と血と、九尾を隠し通す義務がある
「蒼火、お前も会ったらあいつの事気に入ったと思うぜ」
「そうですか?私には…」
バサッと羽音を立て窓枠に着地した朱い鳥は蒼火にとって緊急を知らせる鳥、名を灯王(ひおう)
「…綱手姫」
「何があった?」
「木の葉の東の森より緊急事態発生。他国の忍びと思われる上忍10、暗部15が森を抜け里に接近中とのこと」
「そんだけの数で何する気なんだ」
「綱手姫、指示を」
一気に緊迫した空気に変わった中、蒼火は綱手に指示を煽った黒燈が言うように相手の目的が分からない以上下手に上忍や暗部を送るのも得策ではないのだろう
そうなると、今目の前にいる二人に任せるのが被害を最小限に抑え、敵の目的を吐かせるのに適任だ
「黒燈、蒼火に命じる。リーダーと思われる者を捕らえ、後の者は始末しろ」
「「御意」」
膝を折り、頭を下げていた二人は返事を聞くとその場から瞬身で消えた
「蒼火」
「どうかしました?」
「…何か嫌な予感がするだけだ」
嫌な予感がすると言うことは罠かと思ったものの、この二人を罠にかけるのは至難の業だ
「まぁ、俺達なら余裕でしょうが」
「用心しとくに越したことは無いですよ」
黒燈の余裕そうな態度に注意をした蒼火は念のためにとポーチから銀色の糸の様な物を出すと糸にチャクラを徐々に流し込んでいた
「それ、糸か?」
「はい、特注で作ってもらったもので、チャクラを流し込んで人を捕らえるのにも、殺すにも便利な道具ですよ」
昔は拷問道具としても使われていたとか言い出した蒼火にそこまで聞いてないと思いながらもそれをどう使うのか知っておかないと巻き沿いを食う可能性も考えられる
「それで、それどうやって使うものなんだ?」
「見てれば分かりますよ」
チャクラを流していた銀色の糸は生き物の様にユラユラと動き出し、蒼火の行けとの合図と共に糸は敵のいる場所に向かって一直線に飛んでいった
「なんだあれ…」
「ぼーとしてると死にますよ」
糸を呆然と見送った黒燈は蒼火の言葉にはっとして敵の気配を探った
「なんて、付く頃に終わってると思いまけれど」
蒼火の言葉に意味が理解できない黒燈は首を傾げながら敵の元へと急いだ
「なんだこれ」
唖然とした様に黒燈が漏らした言葉に蒼火は上手いこと引っかかってますねと自分が仕掛けた罠を見て呟いた
張り巡った先ほどの銀糸はまるで獲物を捕らえる蜘蛛の巣の様に敵を絡め見事に捕らえていた
「リーダーは…」
チャクラの量でリーダーを判断しようと集中して敵を見る蒼火に対し、やることがない黒燈は周りに注意を払っていれば蒼火を狙っている影が見えた
「っ!蒼火!!」
「!」
クナイが放たれた瞬間黒燈の声に敵の存在に気が付いた為慌てて結界をはるとクナイが結界に弾かれた音が響いた
その瞬間に黒燈が敵と間合いを一気に積め背後を取ると首元にクナイを突き付けた
「蒼火」
「その人は違います。この人がリーダーです!」
刀を抜いた蒼火は結界を解くと気配を消し切れていない何か印を組もうとしているリーダーらしき者に刀を向けた
「くっ!」
刀をクナイで弾いた敵に対してそのままの近距離で刀を持たない手にチャクラを纏わせ敵の隙をついて攻撃を仕掛けた
「やっぱり殺さない用にするのは不向きですね…」
致命傷にならない程度の攻撃を仕掛けるものの敵はまだ元気に動き回れているのを見てポツリと呟いた蒼火だったが
「おいっ、蒼火遊んでんじゃねぇ!」
「いえ、決して遊んでる訳では…」
遊んでると思われたらしく黒燈に怒られ訂正してみたものの確かに遊んでいる端から見たら遊んでいる様に見える状態に溜め息を吐いた
「仕方ないですね」
素早く印を組んだ蒼火は敵の背後に回り込み触れた。その瞬間影分身を消したように消えた姿に黒燈は首を傾げた
「イビキの所に送りました。拘束してから送ったので大丈夫でしょう」
「…意外と不器用なんだな」
何でも一人でやるイメージがあった蒼火だったが迷子になったり敵を捕まえるのに戸惑ったりする姿に人間らしい部分が見えて思わず笑った黒燈に蒼火は拗ねた様な反応を返した
「悪いですか不器用なんです」
「悪くねーよ。ただ、お前も人間らしいなぁと思っただけだ。あとはイビキの報告を待つのみか」
「…そうですね」
人間らしい…
その言葉は胸を苦しめた
黒燈とは…
人間とは同じではないと思えば思うほど胸を締め付ける痛みを今日も隠すのだ
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苦手は誰しもありますよねー
里を潰すのは得意でも特定の一人を捕まえるのは苦手だったりしますよね!ね!!!
コメントに夜霧の番外編が見たいとあったので張り切って創作中でございますw
夜霧とナルトの出会いにするかシカマルとの関係改善か…
とりあえず、次はちょっと意外な方が関わってきますよー
2013.12.20 完成
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