運命を変える




「先輩、久しぶりです」
「今すぐ速攻で回れ右をしなさい」
 扉を開けた瞬間の言われように理矢は少し傷ついた。開けた扉の先にいるのは理矢が予想した通りの少年であり、聞こえてきた言葉も半ば予想通りだったのだが。
「先輩、いつも私が来るたびそう言うのは止めないしゃいか」
「面倒ごとしか持ち込んでこない君が悪いんだよ。僕、昨日から少し忙しいから」
「どうしたんしゃい」
「他校との部活、交流会と言うことで他校の方が放課後一人昨日から来ているんだよ」
「へぇ、しゃい。どんな子ですか」
「無口な子かな。うん」
「ほうしゃい。で、先輩本題に入るしゃいけど」
「仕方ないね。なんだい」
 本題と言った時、少年の表情が少し歪んだ。
「もしかしたら分かってるんじゃないかとおもうんしゃいけど、あの子に変な様子ないしゃいか」
「あの子って、ああ、あの子ね。生憎最近は変わったことばかりだよ。日に日に変になっていく、もう無理だね」
「そうしゃい。あの、手遅れにはなってないしゃいよね」
「僕としてはあの状況こそが手遅れだけど、でも君がいう手遅れにはまだなっていないよ」
「そう。よかったしゃい」
「どうしてこんな事きいたの」
「暫く被害がでないんです」
「そう言い事じゃないと、言いたいけど。そうも行かないんだよね。僕も出来る限り様子を見るようにするよ」
「お願いするしゃい。では、先輩、さらばです」
「はい。じゃあね」



 図書室。騒がしい声が聞こえていた。その中で一際高い声が響く。

「ねぇ、尾神君。今日の帰り、みんなで寄り道しましょう」
 そう言ったのは沙魔敷猫と言う名前の少女だった。
「……」
 無言で答える蓮に沙魔敷猫がニコニコと笑う。
「返事しないって事は良いって事よね。じゃあ、決定よ。もう決定よ、今からいやっていても無理だからね。逃げようとしてもみんなで連れて行くからね。うん、じゃあ、宜しく」
 言って逃げていく少女に蓮の代わりに周りがため息を吐いた。
「なんだい、あれは。押しつけ強盗かい」
「さあ? というか、みんなには誰がはいとるんや」
「僕は言われてないから。セーフだ」
「その考えやと、わしもセーフやな」
「じゃあ、他の子か」
 周りを見ると二年生軍団がどんよりとしている。その中で比較的マシな女子に声をかける。
「下井ちゃん。あの子、いきなりどうしたの」
「さあ? ただ昼休みにやってきてこの事の了承は取っていましたよ。と言うわけで私も行ってきます。何か不安なので」
「そう。くれぐれも気を付けてね。張り切ってる山岡ちゃんとか恐い」
「はい」
 こんな会話がなされていた。



 そんな事があって、そして放課後
 約束通り蓮は強制連行されてデパートに連れてこられていた。
「何処行く?」
「何処でも言い」
「じゃあ、本屋かどっか食べ物屋」
「奢らない」
「チッ。何で真里阿は私が言おうとしたことを先読みするかな」
「分かり易いからだろ」
「たかるのはいつものことやしね」
「だってお金一銭も持ってないもん」
 賑やかに六人が歩いていく。六人が向かったのは取り敢えずフードコーナだった。それぞれが適当に買い席に座る。
「真里阿、分けて」
「嫌だ」
「じゃあ、千」
「嫌」
「なんだいみんなけち」
「しらん。というか北は良いが本当になにするんだ」
「えー、取り敢えずおしゃべり? 尾神君のところの部活ってどんな感じ?」
「……」
 蓮は答えない。まあ、そうだろうなと他の人たちは思った。さあ、どうするべき方考える中、一人だけ違う動きを見せた
「ねえ、答えてよ」
 今回の件を企画した沙魔敷猫だ。彼女はしつこくれんに聞いた。最初は答えなかった蓮もやがては根負けした。周りはそれに呆気にとられた。
「……少ない」
「少ない? 人数が何人?」
「……二人」
「うわぁ、すくな」
「それで、部活としてなりたってんの」
「廃部せえへんのか」
「活動とか、どんな感じ」
「……特には何も」
「そっか。部長さんはどんな人」
「……まあ、普通」
「そっか」
「いや、普通って言われてもわかんねえよ」
「まあ、そこは良いじゃん。他に何話せばいいのかな」
「知るか」
「あ、じゃあ、好きな食べ物は」
「……アイス」
「え、なんか可愛いと思った」
「可愛いというかただ驚くだけながやけど」
「アイスって。なんかしんじらんない……」
「じゃあ、好きな色」
「……特には」
「好きな芸能人」
「……知らない」
「……じゃあ、今度は……」
 こうして時間は賑やかに過ぎていた。
 しばらく六人が騒いでいると、その内の一人が不意に動きが止まった。
「どうしたの、亜梨吹」
「ぁ……、いや、ちょっともう帰らなくちゃなって」
 あわただしく動く少女を周りが見る。
「えーー。もう?」
 拗ねた振りをする少女に返ると言った少女は何度か頭を下げる。そして、
「用事あるから。ちょっと帰る」
 それだけ言うとパッと席を立って、小走りで帰ってしまった。その後を五人が見ていた。
「変なの」
「まあ、用事があるんだろう」
「……」
 一人の少女が僅かに俯いて震えていた。蓮がそれを見た。彼も立ち上がる。
「尾神君?」
「俺も帰る」
「え? もっといようよ」
「……帰る」
 短く呟き蓮は歩き出した。その瞳は真っ直ぐ前を向いて。
「悪く思うなよ……」
 誰かに呟きながら








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