運命の邂逅



 一人の少年がある公園でじっと地面を見ていた。赤い色がこびり付いた地面をじっと見つめていた。
ーどう?ー
 そんな声が聞こえてくる気がしていた。
 じっとじっと見つめながら……。
「何してるんしゃい」
 聞こえてきた声に少年は後ろを振り向いた。一人の少女がそこにたっていた。
「それは……、何しゃい」
 顔を顰めながら少年の隣にたつ少女は地面に転がるそれを見てさらにその顔を歪めた。
「こんな物じっと見るもんじゃないしゃいよ」
 こんな物と言われたそれは、折り重なる四羽の小鳥の死骸だった。たくさんの血を流し、明らかに不自然な誰かの手による死に方をしている。
「……」
 少年は少女に対してなにも言わなかった。ただその目を死骸から反らさない。それに肩眉を少しだけ上げ、少女は不快に顔を歪めた。
「にしても、誰しゃいかね。こんな悪趣味なことをする奴は」
 そう言いながら少女はカメラを手に持ちその場を撮影し、そして家庭用のゴム手袋とビニール袋をポッケトの中から取り出しては死骸の処理をしていた。その様子を少年が眺めた。
「ん? どうしたしゃい」
 見つめてくる少年に少女が首を傾げる。何も言わない少年だがその目は少女が持つビニール袋を見ている。
「ああ、これのこと。まあ、仕事柄こういうもの見る機会も多いしゃいし、処理することもよくあることだから一応持ち歩くことにしてるんしゃいよ」
 教えても少年は何も言わなかった。納得したのかどうかも怪しい。そもそもこのことで当たっているかもどうかも。
 少年の視線が少女から離れる。
 何を見るのかと思いおえば、それは赤い血が染みた地面を見る。
「何を考えているのか知らないしゃいけど、あんまり死の影は見ない方が良いしゃいよ。気分が悪くなるしゃいからね」
 少年の瞳は動かない。肩を竦めた少女は別のビニール袋を取り出すとその土をスコップで掘り出していていた。
 それが終わると少女は一つため息を吐く。
 少年は掘られたその後もじっと見つめている。
「もう、いい加減やめんしゃい」
 少女の制止の声に少年は反応を示さない。
 そんな少年を見ていた少女だったが、一つ息をつくと背を向けた。
「早く帰りんしゃいよ」
 少女の声が少年の背に届く。
 少年はずっと地面を見ていた。


 これが後に物語を動かす鍵と歯車の中心である、少年と少女の出会い









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