二月といえば
『…獄寺さん、恵方巻きって知ってます?』
「あぁ?」
突然の私の問いに獄寺さんは訝しげに眉間にシワを寄せた。
「何だよ、その…恵方巻きってのは」
『まぁ簡単に言うと、節分の日にその年の恵方…縁起の良い神様のいる方角を向いて無言で太巻き寿司を食べるという風習なんですけどね』
「で、その風習がどうしたんだよ」
『雲雀さんって…事ある毎に日本の行事とかやりたがるじゃないですか』
「あー…まぁそうだな」
言いながら表情に若干呆れの色が混ざったところを見ると、私と同じ思いでいるらしい。
『それで突然言い渡される前に自分から、どうするんですかー?って訊こうと思ったんですけど』
「それって下手すりゃ墓穴掘りなんじゃ…」
『そうなんですよねー。そこで獄寺さんがご存知か訊いたんですよ。日本で住んでらっしゃった所で恵方巻きの風習があるのが分かってたら心の準備が出来るじゃないですか』
「お前も学習してるんだな」
ちょっと獄寺さん!
そんな哀れんだ目で見ないで下さいよ。
自分でも悲しくなるじゃないですか(涙)
『まぁ…でも馴染みが無さそうなので下手に訊かないようにします。そもそもここで恵方巻きって微妙だなーと思ってたし』
「何がだよ」
『だって獄寺さん、想像してみて下さい。イタリアのこんなお屋敷で、マフィア(しかも美形)が揃って同じ方向いて無言で黙々と巻き寿司丸かぶりしてる様を』
「…………………シュールだな」
『でしょう?』
何とも言えない表情になった彼にうんうんと頷いた。
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